メールにて減圧症等の質問された内容に返信をしたものです。

國次 秀紀の考案した減圧症自己治癒潜水法を考える上での私感も入っていますが、一考の価値有りです。

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> 肺より吸収されて全身のリンパ管及び血管に入り込んだ窒素が、循環されながら
> また肺より排出されていくが、
> 何らかの要因によって残余窒素量が多くなり、排出されなくなりコアを持った
> 窒素バブルとなり、体内を循環しているうちにある特定の組織に定着してしまう。
> そして減圧症なる症状を呈するようになる。

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呼吸によってその周囲圧空気(※1)に暴露された肺より、肺胞毛細血管の血漿並びにリンパ液に吸収された窒素は全身の動脈を介して各組織へと窒素を運搬し、その分圧に比例して各部位組織細胞に吸収して行く。これは、体表面への水圧が掛かった場合、体表面の細胞組織より水分成分のリンパ液並びに血漿が搾り出されて静脈内へと迷走を始めるが、この時に、この組織へと窒素が浸透してこの組織の保護に回って居ると思われる。また、体表面では無く、内臓の組織では動脈血と静脈血の血圧バランスを取っていると思われるが、このバランスにも窒素が内臓組織に浸透して組織の形状維持(組織を弾性化)に介在していると思われる。動脈血の方が静脈血より常に血圧が高い状態を維持して酸素並びに栄養分を送って筋運動を助けている。一つ、ここで注意をしなければいけないのは表皮と真皮の組織は大きく違っていて、表皮は体温の調整等も間接的に行っており、違いと成るのは表皮組織は汗腺を閉じたり、また表皮組織から水分成分を放出しても、更に暫くの間は栄養分や酸素が少なくても他の組織より耐える事の出来る組織となっている事を見逃してはいけない。
さて、この各組織の形状維持又は弾性化する為のファクターは何で有るかの疑問が湧いて来るが、この答えには血漿蛋白以外にも組織の浸透膜イオン化による組織形状の維持機能が有る。

話が少し前に戻るが、潜水加圧過程に於いて体表組織より血漿及びリンパ液の体液の移動が起きて、腹腔内の肋軟骨の保護や関節内へこの体液が充当する働きが有る事を忘れてはいけない。この効果は哺乳類独特な物で、静脈とリンパ管が作用して外圧の分散を助けて居るものと思われるが、潜水の目的や作業を終り浮上を開始すると、外圧が下がって行くと、今まで保護体液として機能していた体液を多く含んだ血液が心臓を反して肺へ往き、酸素を多く含んで動脈経路の各組織の正常なイオン化を働きかけて元の組織へ戻る働きをしだすが、体液の安定と窒素の排出を完了するまでは継続して続いていて、潜水の程度にもよるが12時間以上72時間以内もの排出と体液安定時間が掛かるものとされる。

さて、浮上時に於いて今まで体内組織に蓄積された窒素は静脈に繋がる毛細血管を介して放出されて行くが細胞の老廃物も排出されて行く。通常であればこの老廃物を核として、この周囲に体内で自然発生する空気泡(サイレントバブルス)の大きめな泡が付着して静脈内を移動するが、核が大きい場合はリンパ管へ排出されて血流の流動疎外を起こさない仕組みと成っている。尚、静脈内を移動する大量の空気泡(サイレントバブルス)は肺に達して消泡される。

一般に述べられる減圧症では浮上時の過飽和によって窒素泡が出来るとされており、前述の老廃物核に窒素の泡が取り付いて血管の閉塞が起きるとされている。しかし、この窒素泡は常温で気化発泡するには条件が足りない矛盾点が生ずる。

ただし、窒素の泡が出来る以前に体内で産生されている空気泡(サイレントバブルス)は潜降中、潜水中、浮上中であろうが産生されて静脈内へ排出されている。つまり、体内に浸透した窒素は窒素の静脈内排出の過程と共にサイレントバブルスに何らかの影響を与える可能性が有るのでは無いだろうか?

サイレントバブルスは単なる空気泡であったとすると肺で消泡されなかった場合、心臓を経由して脳に送られた場合は血栓が起きて一大事となる。しかし、通常の生活に於いてはその様な事は起きてはいないのだ。とすると、この空気泡の形成は微小泡の集まりで有り、肺を反して酸素の取り込みによって微小泡の集合した泡の塊は排出または生命維持に影響の無い極小な泡に分離して動脈内を循環するものと思われる。とすると、空気泡の表面膜がどの様な成分かが知りたくなるのである。血液の循環に際し問題とされない成分となると脂肪系や蛋白質系であり、通常の血液循環に影響を与えない成分で有る事は間違い無いのである。これは、異質な成分として認知されると白血球成分達がこの異物へと攻撃を加えて排除しようと働くが、それすら起きていない事がこの空気泡は異物では無いと証明している。つまり、空気泡の名前は誤解を招くので生体内生成ガス泡といった方が良いのかも知れないですね。  空気泡→生体内生成ガス泡

さて、潜水の話しに戻してたっぷりと窒素を含んだ身体で浮上を開始すると、不注意や不意な状況で過飽和を起こすとシャボン玉の様な生体内生成ガス泡(サイレントバブルス)表面に窒素が油化結合した状態と思われ、その溶けた量によって表面張力の強い気泡形成が出来、その形態は赤血球や血小板の様に微小血管でも通過する事が出来るが、これに微小な老廃物核が有った場合に血管に閉塞を起こしてしまう。これが、血管閉塞型減圧症で有り、動脈及び静脈の毛細血管側で起きる為、相対的なT型及びU型、並びに皮膚型の減圧症が起きるのである。ただし、U型の減圧症は心臓を通過して脳内での動脈型血管閉塞の場合である。毛細血管の閉塞によって周囲の組織へと栄養成分や酸素、水分の補給が行き渡らずに神経を介して痛みや痺れとしての警鐘信号を送るが、外科的手術の出来る部位であれば摘出してしまえば問題も無いので有るが、殆どが関節内や手の入れられない部位で有る事も事実である。これは、U型が典型的である。

ただ、一つT型減圧症の中で筋肉型と呼ばれる減圧症があるが、多少なり不思議と言わざるを得ないのだが、筋肉に力が入らない及び痺れがあるとされるが、筋肉に力を入れる場合は、筋繊維の収縮で力こぶを作るが、この収縮で筋肉内の血液を搾り出している。この搾り出しが出来無いと力が入るとは言えないのである。筋肉内の毛細血管から静脈へ血液を搾り出すのだが、この過程で血管の閉塞が有れば当然として力は入らない。一部の筋繊維から血液の搾り出しが出来無い場合はチクチク感として認知出来、痛みを我慢すれば力も入ると思われる。

しかし、筋繊維の一列に血管の閉塞が有った場合はそうは行かないのである。その痛みや痺れの部位も広がり、ズシリとした重い痛みに変わってしまい、我慢の限界を超える為に力が入らないと思われる。

筋肉内より血液の排出では、静脈側の毛細血管に問題が有ると見え、筋繊維細胞と血管への間質液との間で起きる可能性が有るとする。この間質液と筋繊維の浸透膜間で間質液若しくは血漿蛋白が何らかの原因で固化又は乳化されると血流の阻害が起きて血液の排出が出来無くなり筋肉に力が入らなくなる。血漿蛋白は粒子が大きい為に組織間を通過出来無いのと、窒素は蛋白質や脂肪分と結び付き安い性質を持っていて、変異して固化又は乳化するものと思われる。 この原因の一つとして挙がるのがマクロファージであり、窒素を取り込み分解や排出しようとするが、時として血管外の組織に取り囲まれて出て来れない場合が有る事も忘れては成らない。この事が、血管を外部から圧迫して血流の阻害を起こす。

これ以外にもU型の中枢神経型の内、部位筋肉への血流阻害や神経障害も有る事を忘れては成らないが、大脳皮質部では全身の感覚点の数は、触点50万、冷点25万、温点3万、痛点200万の刺激にも影響を与える。

さて、最近での浮上の仕方や浮上時の酸素吸入、並びに浮上後の酸素吸入での洗い出しが効果的とされているが如何であろうか? 考えて見よう。浮上に際しては1993年2月にUS NAVYのダイビングテーブルが見直され浮上のスピードが9m/分と設定された。更に、その潜水の内容によっては9m以浅での浮上のスピードを浅い方に向けて変則的に変えた方が良いとされている。この提議の趣旨は定かでは無いが、窒素の過飽和に対する低減策と思われる。しかし、國次 秀紀の私感として述べれば、浮上に際しての窒素放出並びに体液安定の為の血流量増加に伴う大静脈圧過大の為で有り、6m及び3mでの停止は効果的である。

また、窒素の減圧及び排出に伴う窒素圧低減効果は酸素の吸入により効果大であり、奨励出来るが、浮上後の窒素排出での酸素吸入は気休めに近い物と言わざるを得ないが、多少とも効果がある。ただし、減圧症は水面への浮上までと、高所へ移動した時の過飽和に原因が有るが、発症後の酸素 による窒素の洗い出しには効果は無いとしか言い様が無い。

※1 潜水用ミックスガス以外の呼吸装置では全て窒素が介在する。
参考までに: 液体窒素は温度が−196℃のきわめて低温の液体です(無色透明)。
窒素の性質として、水にわずかに溶け、ヘンリーの法則が成り立ち、.空気よりも僅かに軽く無味無臭。
窒素は生体内ではタンパク質の元であるアミノ酸の主要な構成元素となっている.
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> 減圧症と自覚する事ができるということは、ただ単に窒素という気体ではなく
> 組織に障害をもたらすことができる窒素バブルの形成があり、尚かつ組織に定着して
> いることと考えられるのですよね?

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上にも詳しく書きましたが、窒素は血液の血漿及びリンパ液に溶け込み体内取りこまれますが各細胞組織へと取り込んで行きます。この時に、たんぱく質、糖分、脂肪等に大変良くなじんで取りこまれるのです。これは窒素が多く取りこまれた事によって他の違う物質に変化して安定化を図る可能性が有ります。ヘンリーの法則に従い、体内での高濃度窒素は大半が液化、一部は固化或いは乳化した状態で全身の細胞内に分散し蓄えられます。

障害を起こすのは過飽和による放出圧過大ですから、決められた浮上スピードと、浮上途中での停止等が大事ですね! 何よりも大事なのは過飽和にさせない事です。また、窒素は体内での気化ガス泡となるまでにはかなりの圧差が必要と思われます。通常は窒素の排出も血漿やリンパ液を介して放出されます。それと、サイレントバブルスも通常通りに肺まで達して消泡します。

しかし、浮上スピードが速かったりするとサイレントバブルス表面に窒素の油化膜を張る事で窒素の放出を助けている事となりますが、油化膜の強度が増し過ぎるととこれは異常な状態で確定過飽和と見なされます。前者は肺で排出の出来る許容窒素泡であり、後者は肺で排出の出来無い確定型窒素泡では有るが、少ない数であれば障害が少ない可能性、つまりは後に組織に取りこまれる可能性が強いと思われるが、多かった場合には障害の確率が高くなる。 結果としてU型の減圧症になると思われる。

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> 自覚してからでも、すばやく(半日以内くらい)酸素吸入をおこなえば
> 殆ど障害を受けない内に、窒素バブルを排出できるのでしょうか?


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自覚してからでは、地上に於ける窒素泡化した窒素の排出は無理と言っても良いでしょう。上の項でも述べていますが、どの部位に介在しているかなのです。場合によっては内臓から門脈を通って腎臓や肝臓へ行き吸収分解の可能性も有りますし、腎臓から膀胱へ余剰な水分として排出されますが、まれと言わざるをえません。

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> 一部の人達が、再発防止の為にダイビング後に水中もしくエキッジット後に
> 酸素吸入により窒素の洗い出しをされているのは、聞いています。
> また、減圧症かもと疑い酸素吸入をおこなってから、病院へ向かうというのも聞きま
> す。
> 疑っても酸素吸入のみで、症状が無くなったら病院へ行かなくてもOKなのでしょう
> か?
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潜ったその日のダイビングプランに問題が多少有って減圧症ではと疑う場合と、確定的に減圧症、又は以前から減圧症に成っていた可能性が有る場合とでは明らかに対処の仕方が違います。最近の傾向として、以前から減圧症に罹患しているのにも拘らず、急に減圧症の症状が出た場合、その当日の症状として対処して居る方が大半です。が、為に治癒しない方が多いのです。これは症状が安定してしまっている状態での治療の為、治りずらい物と見なされています。

ですから、当日の減圧症か、以前からの無知覚減圧症の症状かで対処が違いますので返事に困るのですが! 酸素を吸って、医師に掛かった方が無難です。

しかし、浮上後の酸素はエアエンボリズム以外は気休めで、移動時に高所等が有る場合は有効です。また、酸素が無い場合はハイパーベンチレーションでも十分に効果が期待されますが、水中や陸上でも可能です。つまり、減圧用の酸素は無くても呼吸による酸素過多作成(O₂が1.3〜1.6ATM)は可能です。

この質問は現地ガイドからの相談が多いのですが、殆どのガイドが少なかれ減圧症に掛かっていますので、病院に行くのは減圧症の程度によって本人次第としか言えませんね。
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             プロテックスジャパン 國次 秀紀 06.1.26