【「スキューバダイバー」自分の身を守る為の予備知識】 study-four_eからの続きです。

R.血液の循環→体循環と肺循環    

血液の循環には心臓の神経支配、血管の神経支配、反射や化学受容器等、複雑なメカニズムが存在している。

ダイビングに於ける減圧症発症と治療及び治癒には、この項の説明が不可欠となる為に詳細に記載する事とした。

右の図を見てお気づきだろうか?

地上での平常時、動脈側に約30%、静脈側に70%の血液が配分されており、心臓左心房・左心室は明らかに吐出ポンプで、心臓右心房・右心室は吸引ポンプとして機能している。

私達ダイバーでは、ダイビング中、ダイビングでの浮上中、そして、浮上後の血液の配分(70%:30%)に問題は無いのだろうか?

つまり、体のどこかでの還流障害や、静脈血の増減、動脈血圧の変位、静脈血成分の異常等で、身体には相当な負荷が掛かり、生命の危機や減圧症になる可能性が高いのである。

もう一度、血液の循環を見直して貰いたい。


もう1つの循環→冠動脈(心臓に酸素と栄養を補給)

重要

冬場のダイビングに於いてドライスーツや厚めのウエットスーツを着てダイビングを楽しむ事が出来るが、オーバーワークや過呼吸に伴う呼吸によって肺が冷やされ、更に血液が冷える事で冠動脈の血液までもが冷たくなる事で心臓麻痺を起こす事が報告されている。

寒くて胸が痛い等の症状が有った場合、身体を休めてオーバーワークやオーバーキックをしない事だ。また、急いで身体を温める事に専念して頂きたい。

尚、心臓麻痺を起こす場合は胸や息苦しさを訴えた後に気を失い、また心停止が起きる為、この様な症状を訴えた場合はすぐさまに船上又は陸上に上げて暖を取らせ、更に温かい飲み物や血糖値の上がる物を与える。

万が一、心停止した場合は心臓マッサージを重点に行い、更に手足の屈伸等を行い静脈血の流動を助けながら体温の上昇を助ける。(身体を心臓に向かってさする事も効果的)
この時、脳血流に気を払う。場合によっては頭を多少低くする。




                 動脈経路                    静脈経路

◎心臓より全身に送られる血液は、酸素を全身へ運ぶだけではなく栄養素や酵素他の生命維持の物質の需要と供給を司っている。

また、生命維持や諸事変化する環境等にも神経網の信号を受けて随時対応し、不必要な成分・老廃物は排出する器官や分解する為の臓器へと搬送されて行く。

しかし、ダイバーにとっては時として困った事が起きてしまう。

吸引した空気は肺の中で肺胞組織へ暴露され、酸素窒素をその血液内へ取り込んでしまうが、その時の環境圧力分の成分を全て体内に取り込む訳ではなく、時間を掛けて飽和していくのだが、環境圧力分と等しい訳では無い。これは、体内での酸塩基平衡をに従った取り込みだけなのだ!!

酸素の場合は仮に取り込んだとしても必要な物だけを消化し、使われない酸素は消費されるまで循環する。

窒素はどうだろうか?

酸素の搬入路はヘモグロビンに対し、窒素の場合は血漿成分に多量に含んだ状態で循環して行き、各組織にまんべんなく暴露して行く。

この窒素はタンパク質や脂肪に対して結合しやすく、一度結合すると中々切り離しをしないが、特に問題となるのは骨の関係であり、造骨細胞は必要に応じ造血細胞に替わるのだが、その周囲は多くの毛細血管や骨髄組織により形成され特殊な脂肪細胞群が存在する。

減圧症等の一番心配な部分であると今までは言って来たが、窒素N2は肺で曝露されて肺毛細細静脈の血漿中へ取り込まれ、ここで酸化されて血中アンモニア(NH3NH4+)へと変わる。

NH3+H2O⇔NH4++OH- 酸塩基平衡

血液中のpHのアルカリ化によって強刺激臭・有毒性・水溶性・脂溶性のアンモニアNH3が増え、酸化によって無味・無臭・無毒・難脂溶性のアンモニウムイオンNH4+が増える。

通常、大半のアンモニアはアンモニウムイオンNH4+として安定した状態で常在する。

血液の循環は安静時で7分〜8分位で、ジョギング程度の運動で5分位と言われ、運動量に応じた心拍数により変化する。

ただ、陸上での循環量では心拍数と血圧の上昇により凡そ1分程度で全血液量を送出出来るとされるが、水中に於いては外水圧による体表面の圧迫により血液の循環も遅くなる。

しかし、水中環境での高濃度酸素暴露によりその運動量等にも変化が起き、経験等熟練ダイバーは顕著な心拍数の低下が起きる。

この心拍数の低下が起きたとしても十分な血中の溶存酸素量に依存している為に苦しく無いのである。これは減圧症に掛かりずらい要素の一つでもある。

血液の量は体重の約7.4〜8%位で、例えば体重が70sの人では70s×7.4%=5.2ℓの血液量となる。

内臓を含む下半身には大まかに3/5、頭を含む上半身には2/5の血液配分となる。

ちなみに脳への血液はどの位かと言うと心臓より送出される血液量の20%前後で、血液量は0.75〜1ℓ/分位である。

しかし、
足への血液に関してはつま先までの送り出しは出来るが心臓へ戻すだけの圧力が無い為、足の筋肉の収縮と弛緩によって血液を送り返している。
    

水中においてフィンキックをより多くすると筋肉の収縮と弛緩の繰り返しによって大量の血液が循環し始める。

第二の心臓(上を参照)と言われるゆえんである。

脳の血流に於いてはどうであろうか?

心理的な部分で血液の送り込みの量も微妙に変わるが、それを司っているのは血液脳関門だ。

脳に於いての酸素消費や二酸化炭素の排出によって血液の酸化が起きるが、この変化に対して適切に血液の流量を調整をしている関所の役割を果たしている。

血液の酸化とは、脳脊髄液の電位がプラスに傾く事や、pHが酸性化に傾く事を言うが、正常値へ保持しようとして血液脳関門での血液流量を調整している。

時として、この調整の為のコントロールが効かなくなる場合が有るので述べておこう。

フィンキックや無理に呼吸を止めた事で酸素不足が生じ、それによって心拍数や呼吸数が増えるが、この血流量増加や脈拍動の増大により脳に対してのストレスが生じてこの血液脳関門も微妙に影響を受ける事となるが、血中でのアンモニアNH3濃度が上昇(アンモニア血症化)するとアンモニアの持つ神経毒性によって血液脳関門が開くようになってしまう。

脳内でのアンモニア濃度上昇(アンモニア血症化)での脳に於ける神経毒では、この毒性によって、身体機能の伝達の遅れから来る反応の鈍さ、思考力・判断力・記憶力・運動及び反射能力等が低下するが、神経毒性変化によるものと見る事が出来る。

また、水深30mを超えた事で血中の窒素が脳内の酵素と微妙に反応し笑気ガス化する事で麻酔作用が生まれて覚醒化が進む。→→→窒素酔い

最近まで、窒素酔いとは笑気ガス(麻酔ガス)化と言っていたが、単に脳内アンモニアNH3の濃度が上がっても神経毒による身体機能の伝達の遅れから来る反応の鈍さ、思考力低下・判断力低下・記憶力低下や喪失・運動及び反射能力低下・陶酔・眠気等が起きるが、神経毒性変化によるものと見る事が出来る。(高アンモニア血症化)

更に、血液脳関門が開き過ぎて血中の溶存酸素量が増加すると、脳内に於いての酸素中毒化が進み、脳に於いての部位によっては頭痛として痛みを発し、また視覚的にも狭い範囲しか見えなくなる。

更に進むと運動機能麻痺も起き、また脳組織を高濃度酸素から守る為に、その回路閉塞を促す事で身体の各機能障害が始まる。

潜水中にこの様な事が起きた場合、初期状態で有れば脳への後遺障害も殆ど無いが、長時間暴露されるとこの限りでは無い。・・・・・酸素中毒の項へ

脳への後遺障害と言っても大概は極度の頭痛位なのだが、時としてめまいや吐き気、体温の低下による悪寒等を催す。

原因は血液脳関門での血液流量コントロールが効かない為なのだが、この血液脳関門のコントロールは集中力欠如やオーバーキック・オーバーワークで起きる身体末梢からの酸素不足等の欲求から起きて来る。→→→ディープダイビングの項を参照

末梢の血管や皮膚表皮組織での血流は?

人間は水中環境及び息こらえをした時に一過性では有るが末梢への血液の循環を抑制する事が分かっている。これはイルカやクジラと同じ様な生態を持っている事を表す。

また、体温の低下に伴い末梢の毛細血管を閉ざして体温の下がるのを抑制する働きを持つ。これはエネルギー消耗に対しての抑制作用が有り、且つ酸素消費も低減するのでスキンダイビングでの潜水に適していると言える。

しかし、スキューバダイバーには大問題とする為に述べておかなければならない。

初心者や中程度のダイバーで有ると、時として緊張し興奮する為に上記の様な末梢血管を閉ざす傾向が有る。

これは潜水の終了間際で有った場合では多くの窒素を抹消の細胞組織に閉じ込める為に減圧症の原因の一つともなっている。軽度の皮膚発疹程度なら減圧症の心配は無いとされるが、大理石斑ともなるとこの限りでは無い。

長時間潜水での体温低下、ドライスーツ使用における体温の低下、血糖値低下に於いての体温の低下も問題とされる。

◎内臓と下肢に対して重要な役割を果たす門脈が有るが、循環と減圧症に対して無視出来ない血液の関所的役割を持つ。

門脈

脾静脈と上下の腸間膜静脈から注ぎ、肝臓にて類洞を介して肝静脈へと注ぐ。

肝臓の全血液量の約7割を供給する血管であり、その内訳は腸間膜静脈からは75%であり、残りは脾静脈から入る。

その機能は消化管で吸収された栄養を肝臓へ運ぶことにある。

 ・構造

○上流
□  下腸間膜静脈 V. mesenterica inferior   結腸および直腸から集め、脾静脈に注ぐ。
□ 上腸間膜静脈 V. mesenterica superior 回腸から集め、脾静脈と合して門脈幹となる。

門脈と大静脈系との連絡

肝臓を経由して大静脈系に到達する経路及び門脈血流の通過障害が起こると、門脈系の血液が大静脈系に還流する側副路となる。

肝静脈経由
門脈→肝静脈→下大静脈

奇静脈経由
門脈→左胃静脈→食道静脈叢→奇静脈→上大静脈

直腸経由
門脈→下腸間膜静脈→直腸静脈叢→下直腸静脈→内陰部静脈→内腸骨静脈→総腸骨静脈→下大静脈

臍静脈経由
門脈→臍静脈→臍旁静脈→上腹壁静脈→下大静脈→下腹壁静脈→総腸骨静脈→下大静脈

少し分かりずらいが門脈を経由した血液は肝静脈→下大静脈へと通過して行き、この後に右心房→右心室を経由して肺へ到達する。肝臓内では一度毛細血管となり血中の成分濾過や成分分解を行い、再び肝静脈となって下大静脈へ注ぐ。

本来、門脈の働きは無駄な血流を抑制するバイパスの様なもので、不必要な血流を抑制して酸素の消費や二酸化炭素の増加を抑制し、呼吸並びに心拍数を増やさない様に働いている。

しかし、一旦、運動量が増えたり、食事をとる事で胃や腸、脾臓、膵臓への血流調整と、吸収した栄養素を肝臓に運ぶ為に働く。

腸管(小腸、大腸)内でのアンモニア産生と余剰アンモニアの処理.

食事に含まれる蛋白質や、消化管(口腔、咽頭・食道・胃・小腸・大腸)への分泌液に含まれる尿素が、腸内細菌によって分解され、多量のアンモニアが産生される。

小腸粘膜グルタミナーゼによって生成されるアンモニアは、腸管(小腸、大腸)内で産生されるアンモニア量の約半分に及んでおり、更に大腸の細菌によって分解される尿素の量は、日に生成される尿素の25%にも及んでいる。

腸内(小腸、大腸)の腸内細菌叢(そう)、腸内常在微生物叢、腸内フローラが変化すると、門脈血中のアンモニア濃度が変動するが、腸内(小腸、大腸)の腸内細菌叢(そう)、腸内常在微生物叢、腸内フローラでの変化とは、ビフィズス菌や乳酸菌が多いと、門脈血中のアンモニア濃度が低下する。

全身を流れる血液中のアンモニア濃度では、門脈血中の濃度が最も高い数値を示す。

肝臓に於けるアンモニア処理能力(尿素回路)と肝臓周囲・門脈系での尿素回路予備処理能力が大きく、体内でのアンモニア産生が大きく増加しても、高アンモニア血症を引き起こす事は無い。

だが、肝疾患や肝硬変、特発性門脈圧亢進症等によって、門脈-体循環短絡路(門脈動脈側から静脈へと)が発達すると、門脈血が肝臓を通らずに直接→体循環に入り、静脈から下大大静脈へと向かい、高アンモニア血症が生じる為、脳への神経毒性が心配される。


◎ここでの説明は門脈系の血液が大静脈へ還流する事で減圧症の発症を助長する影響が起きる事を促している。

つまり、睡眠不足や過疲労並びに二日酔い等での内蔵機能低下障害が有った時は、この通過障害が起き易く大静脈還流を誘発する。

下の図を見てもハーフタイムの短い、浸透が早い組織として門脈系は見ているが、その日の体調に相当左右される。
  


                          
ハーフタイムによる血液循環図(拡大版)

   
◎参照 1.  2.

血液とリンパ液の関係  リンパ=間質液=血漿蛋白質を除いたもの.

    

血液中の酸素O2や栄養素は直接組織の細胞に取り込む訳で無く、その間に間質液が介在している。

毛細血管壁を透過した酸素O2や栄養素は間質液中に出て拡散によって細胞に到達する。

細胞から出た二酸化炭酸ガスCO2や代謝による産生物質も間質液を経て毛細血管に取り込まれる。

間質液の組成は毛細血管壁の透過性によって決まるが、水、イオン、酸素O2及び二酸化炭素ガスCO2、代謝産生物は自由に通過出来るが、血球成分と大型の血漿蛋白は通過する事が出来無い。

ここでのイオンは血漿中に有り、無機物の陽イオンと陰イオン。
白血球は血管外遊走の能力が有るので間質液中にも見る事が出来る。

毛細血管内の血漿と間質液との間に作用する力(圧力)は=毛細血管血圧と血漿の膠質浸透圧で有り、血圧は水を血管外へ押し出す力であり、膠質浸透圧は水を血管内へ浸透させる力を持つ。

毛細血管の動脈側では血圧より膠質浸透圧の方が大きいので水は間質液へ移動し、静脈側では血圧の方が膠質浸透圧より小さいので、水は間質液中から血管へ移動する。

血管から間質液へ出る水の量と、逆に間質液から血管内へ入る水の量が等しければ問題は無いが、間質液に出る量が多い場合は組織を圧迫したり体表面へ膨れ上がったりする。

この様な事が無い様に作用するのがリンパ管である。

リンパ管は間質液内に開いており、排水の役目も果たしていて間質液量が増えると間質液の一部はリンパ管に入ってリンパと成る。

血圧と膠質浸透圧との関係で水が移動する事「スターリングの仮説」と言う。

血液の成分と生理作用




血液循環での神経支配.

血液の循環は心臓反射と血管運動反射によって行われているが、その循環メカニズムの中心的役割を担っているのは延髄に集約されている。(下の図参照)

心臓の神経支配

1.交感神経と副交感神経

心臓は胸部交感神経(T1〜T4)及び迷走神経(副交感神経)によって支配を受けている。

交感神経は心房、心室全体に分布しているが、迷走神経は洞房結節、房室結節に分布するものが多く、心房には分布するが心室には少ない。

また、迷走神経には安静時にも持続性インパルスが見られるが、交感神経には無い。

次の作用によって交感神経は陽性(促進的)に働き、迷走神経は陰性(抑制的)に働く。

1) 変時作用 chronotropic action
交感神経刺激によって心拍数が増加し、迷走神経刺激によって減少する。

2) 変力作用 inotropic action
交感神経刺激によって心拍出量が増加し、迷走神経刺激によって減少する。

3) 変伝導作用 doromotropic action
交感神経刺激によって房室間の伝導が速くなり、迷走神経刺激によって遅くなる。

延髄の心臓促進中枢は視床下部や大脳皮質など高位中枢からも調整を受けている為、心因・外部・内部刺激によっても上記1)〜3)の促進が起きる。

2.心臓中枢

延髄の迷走神経背側核は心臓の抑制中枢で、1次の心臓促進中枢は交感神経の胸髄側柱(T1〜T5)にあり、延髄の心臓促進中枢から線維を受けている。(上の図参照)
延髄の心臓促進中枢(CA)は視床下部や大脳皮質などの高位中枢からも調整指示される。

心臓反射

心臓を効果器とした反射では

1.減圧反射 unloading reflex.

大動脈弓の壁及び総頸動脈が外頸動脈と内頸動脈に分岐する頸動脈洞には血圧を検知する圧受容器が存在し、大動脈弓圧受容器からの求心性の神経は迷走神経(副交感神経)、頸動脈洞からは舌咽神経の枝である洞神経で、ここから出される求心性インパルス信号は延髄の心臓抑制中枢へ伝えられる。

血圧が上がり過ぎると心臓は抑制され、心拍数や心拍出量も減少し、房室伝導時間は遅延して、血圧が下降して元の状態へと戻って行く。

この時、血管運動中枢を介して細動脈が拡張されて血圧は更に下がる様に働く。

逆に、血圧が下がり過ぎると心臓促進中枢の活動が高まり血圧上昇の反射が起きる。

求心性神経と遠心性神経は共に迷走神経なので、vago-vagal reflexとも言う。

大動脈弓の圧受容器は全身の血圧を一定に保つ働きをしており、頸動脈洞圧受容器は脳の血液循環を全身の一部としてとらえると同時に、脳の血圧を一定に保つ働きをする圧受容器なのである。

2.ベインブリッジ反射 Bainbridge reflex.

静脈還流量が増加すると心臓の拍動が促進される反射作用.

大静脈や右心房にも圧受容器があり、求心性神経は迷走神経(副交感神経)が司っていて、静脈還流量が増加して右心房の圧力が上昇すると求心性神経の迷走神経が活発となって心臓促進中枢へと伝えられて心拍数が増加する。

大静脈や右心房の圧受容器を低圧受容器と言い、大動脈や左心房の圧受容器の事を高圧受容器と言う。

3.頸動脈小体反射 carotid body reflex.

血液中のCO2濃度が増すと、頸動脈小体の化学受容器が興奮して延髄呼吸中枢に信号を送るが、その求心性線維の一部は心臓抑制中枢に接続しており、心拍数が下がる様に働く。

しかし、生体内で酸素O2の分圧が低下すると副腎髄質からカテコルアミンが分泌されて心拍数は増加する。

筋運動の時ではCO2濃度が増し、同時に心拍数も増加するが、この時の心臓促進はCO2の作用では無く、交感神経活動から来ている。

4.呼吸性不整脈 respiratory arrhythmia(sinus arrhythmia)

洞性の不整脈であり、吸息期の終期に心拍数が増加する。吸息により胸腔内陰圧が高くなり、静脈還流量が増し、更にペインブリッジ反射により心臓の拍動が促進される。

5.感覚刺激

痛覚、冷覚などの刺激に対しては、心臓は抑制される。三叉神経眼窩部を圧迫しても抑制が起きる(アシュネルのテスト).
頸動脈洞を圧迫しても、心臓では抑制が起きる(ツエルマークのテスト).

6.運動時の変化

筋運動の時は交感神経の活動亢進によって、心臓は拍動と共に拍出量も促進され、筋ポンプによって静脈還流量も増える為、心臓は更に亢進される事となる。

神経支配の無い心臓では、スターリングの心臓の法則によって、増加した血液流入量は回心拍出量が多くなる事で処理されているが、この時に弛緩期容量が大きくなっている。

神経支配のある心臓では回心拍出量は余り変化せず、心拍数の増加によって血液流入量が処理されている。この時、弛緩期容量は変化せず大きくならない。

7.情動の影響

情動には恐怖や悲哀の様に心臓を抑制するものと、怒りや羞恥での精神興奮から心臓を促進するものがある。

     心拍数を増減する要因

心拍数増加(心臓促進)

心拍数減少(心臓抑制)

 1.動脈血圧下降
 2.Bainbridge反射
 3.吸 息
 4.精神興奮、怒り、羞恥
 5.激しい痛覚
 6.交感神経活動
 7.カテコルアミン
 8.筋運動
 9.サイロキシン
10.体温上昇(発熱)

動脈血圧上昇

呼 息
恐怖、悲、冷覚
三叉神経領域の痛覚
迷走神経(副交感神経)活動
アセチルコリン
安静(睡眠中)

11.
12.CO2増加、O2欠乏(2次的)

脳内圧上昇


血管の神経支配

1.血管収縮神経 vasoconstrictor nerve.

多くの血管は交感神経のみによって支配されており、アドレナリン作動性線維によって血管平滑筋を収縮して血圧を上げている。一次中枢は脊髄側柱で、二次中枢は延髄の血管運動中枢内の昇圧部。

2.血管運動中枢 vasomotor center.

延髄の顔面神経核近傍からカンヌキ(脊髄内の中心管と第四脳室を結ぶ器官)に掛けての延髄網様体に血管運動中枢がある。

その吻側部は昇圧部で、尾側部は降圧部となっている。

昇圧部は血管収縮神経に線維を送り、これを持続性に支配している。

即ち、絶えずインパルスを送って血管の収縮状態を維持し、血圧を正常に保つ働きをしている。

降圧部というのは昇圧部を抑制するニューロンのあるところで、降圧部の興奮によって血管収縮神経への持続性インパルスが減少し、血管の収縮状態が弱くなる。

血管拡張が起こると言う表現も用いられるが、血管が能動的に拡張する訳ではない。

3.血管拡張神経 vasodilator nerve

血管拡張神経はコリン作動性神経で、そのインパルスにより血管平滑筋が弛緩して血管が拡張する。血管運動中枢とは関係が無く、血圧調整の作用は無い。
(コリン作動性神経  アセチルコリンの遊離による伝達)

1) 交感神経性血管拡張神経

交感神経に属しながらコリン作動性の神経線維で、骨格筋の血管に至るものの中にはこの系の線維が有る。血管運動中枢とは無関係。

大脳皮質の運動野から発し、視床下部で線維を換えて脊髄に至る。筋運動の時、交感神経活動により腹部内臓の血管は収縮するが、骨格筋の血管は拡張して血流量が増加する事となる。

2) 副交感神経性血管拡張神経

副交感神経に属するものは、唾液線や外陰部に至るものがあり、腺分泌や陰茎、陰核などの勃起に関係している。

3) 脊髄後根性血管拡張神経

脊髄後根を切断してその末梢端を刺激すると皮膚血管の拡張が起き、皮膚の痛覚線維は分岐して血管をも支配していると考えられる。皮膚を強く刺激すると、その部の血管が拡張して発赤を生ずる。


この様なシナプスを介さない反射を軸策反射 axon reflex という。

この血管拡張神経では、皮膚圧迫による発赤、アレルギーによる発赤発疹、軽度皮膚減圧症での発赤及び発赤発疹、発疹等が有るものと思われる。


血液循環の調整メカニズム

血液循環は心臓反射と血管運動反射によって調整されている。血管運動は交感神経によって支配されるばかりではなく、局所的には種々の化学物質によって影響を受けている。

この局所的な調整は、全身に於ける血液循環の調整には直接関係していないが、その組織の活動を維持する上で大変重要。

1.血管運動反射

動脈血圧が上昇した時、減圧反射によって血圧は低下し、同時に血管拡張が起きるが、両反射とも頸動脈洞や大動脈の圧受容器からのインパルス信号によって反射が起きている。このインパルス信号は延髄の心臓抑制中枢と同時に血管運動中枢の降圧部に達して減圧反射の指示を受けている。


血管運動反射は頸動脈洞の圧受容器や大動脈の圧受容器→→→血管運動中枢からもたらされる・・・。

逆に動脈血圧が下降すると、頸動脈洞や大動脈の圧受容器からのインパルス信号は減少し、心臓及び血管への抑制が解除されて血管の収縮が増し、血圧を上昇させている。この事を昇圧反射と言う。

延髄の心臓中枢と血管運動中枢は互いに協調して働いている。ただし、昇圧反射には条件が有って、血圧が60mmHgまで低下しても働くが、60mmHg以下になると頸動脈洞や大動脈の圧受容器からのインパルス信号が消失して働かなくなる。

2.バルサルバ(Valsalva)のテスト

10〜20秒間呼吸を止め、息が漏れないようにして腹圧を掛けていきむと、腹圧上昇によって血圧は上昇する。しかし、これと同時に減圧反射と血管運動反射とによって、心拍数が減少する事で血圧は元へと戻って行く。

血圧曲線では、腹圧(食道内圧)が上昇すると、大動脈圧は僅かだが血圧降下が起き、この血圧降下によって逆に昇圧反射機序作用が働いた為で、グラフ内に昇圧反射的な変化を見る事が出来る。一過的だが血圧が過剰に昇圧する。

スキンダイバーでは当たり前に息こらえを行う為、上の図の様な血圧の変化が起きている。しかし、ハイパーベンチレーションによって息こらえの時間が長くなると、昇圧反射後の血圧低下がブラックアウトの一因を作っている。

スキューバダイバーはどうであろうか?

安全停止点3〜5mでのホバリング訓練で息こらえ等をすると、減圧症の誘発となる為、注意をして頂きたい。ホバリングとは息こらえで行うのは間違いと言う事を再度認識 !!
ウエイトコントロール必携を良く読んで下さい(*^_^*)

3.体位血圧反射

臥位から座位へ体位を変えると、その直後に血圧が低下し、30秒〜数分で元の血圧へと戻る。

[臥位=がいには仰臥位(ぎょうがい)仰向け、側臥位 (そくがい) 横向き、腹臥位(ふくがい)うつ伏せがある]

血圧の低下は静脈還流量の減少による心拍出量の減少と、重力によって心臓より下の血管に拡張が起こる為であ離、元に戻るのは昇圧反射による。

急に立ち上がるとめまいがおこる場合があるが、これは、起立性低血圧と言われるものであり、交感神経系の傷害で昇圧反射が弱められているか、血液中のノルアドレナリン濃度が低下している場合とが考えられている。

重力加速度が作用し、頭から足方向へ重力の5倍=5Gが掛かったとするとめまいや意識の喪失が起きるとされ、仮に−Gが加わったとしても脳動脈血圧の上昇、頭頚部血管の充満、頭痛、意識の錯乱をきたすとされる。

この状況は循環調整の限界を超えているからで、ある程度は訓練によっても克服される。

この現象は、宇宙等での無重力空間に237日留まっても循環器系等には問題は無いとする報告もあるが、起立性低血圧が起き易いとも言われており、また、心筋は委縮して心臓血管系の反射が減弱し、回復には4〜7週間も掛かるとされる。

ダイバーが毎日潜ったとしても、潜った後に地上に於いて重力を受けている為、この様な事は起きないとはされている。しかし、潜水終了間際の浅い水深や水面に到達時、船上、ビーチへの上陸時では循環調整機能に乱れがあり、血圧が一過的に上がり易いとして注意が必要。

4.血液量の調整

血液量が増すと、血管系の低圧部(大静脈、右心房、肺血管、左心房)の圧受容器が興奮し、ペインブリッジ反射によって心拍数が増加する。心房性Na利尿ペプチドが分泌され、腎臓の糸球体の輸入細動脈を拡張して濾過面積を増やし、利尿を促して、血液量を調整する重要な役割を果している。

下垂体後葉ホルモンである抗利尿ホルモンの分泌が抑制され、また、腎血流が増すので利尿(水及び電解質)が起こる。

逆に血流量が減少すると利尿が抑制される。

体を水に浸す(水浸:イマージョン)と皮膚血管が圧迫されて血液還流量が増しANPの分泌が増加する。このANPとは心房性Na利尿ペプチドの事を言い、利尿効果(トイレが近い現象)が増す。

高圧利尿も同じ現象を指している。

5.化学受容器を介する反射

血液中のCO2の増加、O2の欠乏、pHの低下等はいずれも頸動脈洞小体や大動脈小体の化学受容器を介して呼吸運動を促進している。化学受容器の循環系に対する作用では、心拍数の減少と消化管や皮膚の血管収縮であり、この時、脳動脈と冠動脈は拡張する。

しかし、実際には心拍数及び心拍出量は増加するが、これは二次的なもので、化学受容器の直接的な作用は心拍数の減少に携わっている。

CO2の血管への直接作用は血管の拡張作用である。

ダイビングに於いて、ドライスーツでの頸動脈圧迫は、この部位に影響を与え、脳への血流疎外を与える為、CO2の増加に伴い体温の上昇、判断力や体反射に影響する。

6.血圧の周期的動揺

血圧には、心臓の拍動に伴う血圧動揺(第一級動揺)があり、最高血圧と最低血圧の差による動揺がある。

更に、呼吸周期に一致する血圧動揺(第二級動揺)では、呼息相の始に血圧が下降し、吸息相の終わりに血圧は上昇する。

また、呼吸運動に伴う動揺では、呼吸中枢の周期的興奮が血管運動中枢に波及している事と、呼吸ポンプに伴うペインブリッジ反射によって、血圧の動揺が起きている。

それより周期の長い血圧動揺(第三級動揺)とがあり、この場合では、血圧低下での体調の悪い時に起きる長周期の血圧動揺。大量の出血後、マイヤーの波、ロイの波などがある。

この他に脾臓の周期的な収縮もこの中に含まれる。西丸・パークロフト波の血圧動揺波もある。

7.血管作動物質

血管平滑筋は交感神経の持続的な支配を受けており、交感神経の興奮の程度によって収縮と拡張の調整を受けている。また、種々の化学物質によって局所的な血管平滑筋に作用し、この血管平滑筋を収縮したり弛緩したりして調整を行っている化学物質を血管作動物質と言う。

1) ノルアドレナリン : α レセプターを介して血管平滑筋を収縮する。
ノルアドレナリンの作用を刺激する薬物として、メトキサミンやフェニレフリンがあり、反対に遮断する物質として、フェントラミン、プラゾシン、ヨヒンビンがある。

2) バゾプレッシン、アンギオテンシン、セロトニン : 血管に働いてこれを収縮させる。
通常、生体内で生成される物質。

3) エンドセリン : 血管内皮細胞で作られ平滑筋組織へ向かって放出されるが、ごく低い濃度で作用を発現する強力な血管収縮物質で、筋細胞内のIP3(イノシトール三リン酸)の濃度を高め、小胞体からのCa2+放出を促進する。

分泌刺激は血管の伸展及び血管酸素分圧の低下で、内皮細胞が局所の細動脈を調整して血流量を調整している。

4) 心房性Na利尿ペプチド、アセチルコリン、ヒスタミン、ブラジキニン : 血管平滑筋に作用して血管を拡張する。CO2も血管拡張物質の一つ。

5) 内皮細胞由来の血管拡張物質 EDRF : 血管内皮細胞がアセチルコリンなどによって刺激された時に産生する血管拡張物質をEDRFという。  EDRF=endothelium derived relaxing factor.

内皮細胞が血管内に接する面に於いて、血液中のアセチルコリン、ヒスタミン、ブラジキニンによって刺激されると、外面に接する平滑筋組織に向かってEDRFを放出する。

EDRFの実体はNO(酸化窒素)であり、狭心症の治療薬として用いられるニトログリセリンはNO(酸化窒素)化合物である。

8.体温調整反射と血管運動

視床下部の体温調節中枢は、延髄の自律中枢の高位中枢で、体温調節反射は延髄の中枢による反射よりも優先的に起こる。

気温が高い時、皮膚血管が拡張するが、血管運動中枢の抑制だけではなく、汗腺の活動に伴って作られるブラジキニンの作用で、汗腺の活発な部位はその作用でますます拡張する様になる。

気温の低い時、皮膚血管は収縮するが、これらの反射は主に皮膚血管に起こり、その他の血管では余り変化しない。

9.筋運動時の循環

交感神経活動亢進の時、骨格筋や皮膚の血管は拡張し、他の血管は収縮する。骨格筋の血管拡張は交感神経性血管拡張神経によるが、皮膚の血管拡張は体温調節反射と同じ機序によって行われている。

筋運動によって皮膚の温度が高くなると、汗腺の活動が高まってブラジキニンやCO2の作用も相まって、その部位の皮膚及び骨格筋の血管は著しく拡張する。

最高血圧が上昇するのは毎分吐出量の増加と内臓領域の血管収縮とによっておこり、最低血圧では、軽度の運動では変化はしないか、更に低下する場合がある。これは、筋に血管拡張があり、血液の循環抵抗には余り変化がない為、最低血圧が更に低下する様な事が起きている。尚、激しい運動の時は最低血圧も上昇する。

運動をやめた後、心拍数や最高血圧が安静時の状態に戻るまでの時間は、スポーツマン等訓練をしている人ほど早く元へ戻る。

尚、血圧値が一旦だが低くなり、それから戻って行くが、これを陰性相と言い、この陰性相は血管拡張の回復が拍出量増加の回復より遅れるが為に現れる。


下の図では、各種の反射や反応によって血液循環量を調整している中で、血圧に依存した血液の貯留と血流量を見ているが、超高度な生命維持機能として働いている。

しかし、体調不全に陥るとこの絶妙なバランスは失われて、体に変調を来す。

減圧症や高気圧傷害でも体調の不全が起き、元へと戻せない力が掛かっていると思われ、体内の繊細な組織の一部に負荷圧が掛かって、その絶妙なバランスを崩していると筆者はみている。

動脈側は全血液量の30%で高血圧域、静脈側は全血液量の70%で低血圧域としてバランスを取っている。

しかし、これは陸上での日常生活に於いてであって、ダイビング等で体外からの圧力(水圧等)を受けた場合、何らかの循環障害や部位血流障害の問題が起きて来るのではないだろうか?

これは、時として減圧症の発症原因にもなっており、特に浮上時に際して何が原因なのかを克明に調べ、記さなければならないだろう。

【減圧症自己治癒潜水法】では、医療機関でのチャンバー加圧減圧時間が3時間位から6時間に対して、自己治癒潜水法では40〜50分で高確率で治癒・完治効果が現れている。

これは、血液や体液の移動や循環と循環抵抗、血圧が微妙に関係しているものと思われる。

減圧症罹患者の治癒潜水では、減圧(浮上スピード)の仕方で治癒の程度に変化のある事が判っており、更に浮上時の体位(垂直位、垂直・半斜位、水平位、水平・半斜位)による血液や体液の循環抵抗の違いで治癒・完治の程度が判ってきた。

加圧時では6気圧(水深50m)以上で、軽度の減圧症の治癒効果があるが、ただ、潜って浮上すれば治るものでは無く、治癒効果の全てが減圧(浮上スピードと体位)に掛かっているのは間違いない(^^ゞ

注意として、水深50m〜60m(6気圧〜7気圧)まで潜らなければ体内に残されている窒素泡(下記参照)は血液や体液に対して液化出来ず、減圧による消泡措置が取れない為、ディープダイビングの出来る方だけが自己治癒潜水法の恩恵を受ける事となる。

サイレントバブルス(H2CO3+老廃物核他)
マイクロバブルス窒素抱合=マイクロバブルス窒素抱合体=マイクロバブルス窒素抱合体泡.

単純に見た場合、窒素抱合・窒素抱合体・窒素抱合体泡とはガス及び泡組成中に亜硝酸及び硝酸を含んだもの→→→肺に於いて窒化・還元→→→窒素
N2として肺から気化排気

血液や体液の循環(血管や心臓への神経支配)には精神的な部分がかなり影響を与える為、間違ったディープダイビング理論では通用しないし、身体に対して大変に危険である。

 

潜水での脱水(重要)

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S.血液とは何?

減圧症を考える上で一番大切な物、それは血液です。

細胞組織に酸素や窒素を送り、又、各組織に栄養分を運んでいます。

しかし、血液の成分には身体の各組織を安定化し、定常化出来る成分運搬も血液が担っています。

もう一度、血液が何であるかを見直しましょう。

また、T型減圧症の筋肉への影響は血漿蛋白が影響を与えている可能性が有るとして、この血液成分を知らなくてはいけないのです。 

※ T型減圧症での筋肉痛の場合、関節周囲を通過する筋皮神経の関連あり.

さて、@ダイビング中にこの血漿蛋白は動脈側毛細血管より血管浸透膜を経て筋肉組織内へ取りこまれるが、ダイビング時の窒素過大によって血漿蛋白と窒素が結び付き肥大化する事で浮上時に静脈側毛細血管の浸透膜及びリンパ管を通過出来なくなり、浮上する事で、より膨大化して筋肉組織内の周辺組織の圧迫が始まり筋肉痛や関節痛が始まる。(一例としてです)

A血漿蛋白はアルブミンと言い、奥入った細胞内毛細血管壁では細胞組織間で血漿蛋白が作用して毛細血管壁で体液の移動を阻害し、体液移動に際して閉塞を起こしてしまうが、この時に細胞組織内に窒素と結合した組織があれば、窒素を放出出来なくなり、細胞組織内で窒素による膨潤膨張によって痛みが出る。

上述の窒素とは、アンモニアNH3とアンモニウムイオンNH4+と尿素NH2CONH2がこれに該当し、特に有毒性・強刺激臭・水溶性・脂溶性のアンモニアNH3と無毒・難脂溶性の尿素NH2CONH2が残留に於いて問題とされ、どちらも細胞間を遊走するが、特に尿素は脂溶性で無い為に細胞膜(脂質二重層)を通過しにくく尿素輸送体の助けを借りて通過している。また、有毒性・強刺激臭・水溶性・脂溶性のアンモニアNH3が細胞内に閉じ込められると毒性(無毒化出来ないと)によって炎症を起こす事にもなるのです。

注意 血漿蛋白質のアルブミンは細胞間の水分調整や栄養分の移動を行う膠質浸透圧の働きをしていますが、この血漿蛋白質のアルブミンは肝臓で作られており、肝臓の機能障害及び機能への過負荷等が起きると血漿蛋白質のアルブミンの産生が減る為に細胞間の膠質浸透圧調整が出来なくなり閉塞します。

結果、むくみが出たりしますが、ダイビング中であった場合、細胞内に閉じ込められた窒素分(アンモニアNH3と尿素NH2CONH2)が閉塞した組織に内炎症や膨潤・膨大圧迫障害を起こす可能性があります。

T型の筋肉型又は関節型への減圧症となり、高圧用の医療用チャンバーに入り 、治すしかないが、その発症した水深によってはチャンバー圧5気圧では血漿蛋白と窒素を収縮分解する事が出来ない場合が有る。

仮に水深12mで発症したとすると絶耐圧2.2気圧×3〜3.5倍=6.6〜7.7気圧(水深56〜67m)となって高圧医療用のチャンバー最高圧5気圧では治らないのである。

其の為に考えたのが減圧症自己治癒潜水法と言われる高圧下60〜70m以上へ空気潜水によって潜れる知識とスキルの開発であった。

この潜水法はテクニカルダイビングでも行う事が出来るが、何よりも難しいのは管理指導者(スーパーダイバー)の育成なのである。

@Aを上げて見たが、@は圧力下での臨床が行われていない。

Aは既に臨床済みだが、圧力下では無い。ただ、言えるのは@Aでは共に血漿蛋白アルブミンが介在

注意 体液移動にはもう一つのルートであるリンパ管での一方向移動があるが、間質液(血漿蛋白質が殆ど無い状態)としてリンパ管を通って行く。

血漿蛋白アルブミンの減少で膠質浸透圧が無くなり、毛細血管壁が閉ざされる事で体液と栄養分移動が閉ざされ、リンパ液(間質液)がリンパ管を通って抜けて行くと、細胞内液側の組織は脱水と栄養不足へと向かう事となる。


血液の成分

人の血液の総量は体重の約8%、体重が60Kgの人の血液量は約4800mlになります。

血液は循環専用の細胞外液であり、その主成分はナトリウムであって、細胞の中身を細胞内液、外側を細胞外液と言うが、血液はただの細胞外液では無く、効率良く酸素や栄養や老廃物を運ぶ必要が有る為、蛋白質や血球を持つ事によって運搬の能力を高めている。
 
血液とは細胞外液+蛋白質+血球  血液は血漿+血球 血漿とは細胞外液+蛋白質

血球を作る事を造血と言い、骨髄で作られていますが、この骨髄には大きく分けて扁平骨と長管骨で作られていて、扁平骨では骨盤と胸骨、長管骨では大腿骨の様な手足の骨です。特に造血が盛んなのが骨盤で、長管骨等では脂肪等を蓄えています。

血球には赤血球、白血球、血小板が有り、全て血液幹細胞から作られます。

血液幹細胞とは分化して赤血球、白血球、血小板に分かれます。

 

赤血球は骨髄で増殖し分化した時点では成熟出来て無く、増殖時の核を捨てて初めて本来の赤血球として血液中に出て来ます。

核を持っていない為、分裂増殖は出来ずに使い捨ての形となって凡そ120日間働き、その後は脾臓よって壊されますが、赤血球内のヘモグロビンヘムと言う鉄を含んだ色素とグロビンという蛋白質で出来ていて再利用されます。

尚、グロビ ンは代謝を受けるとビリルビンと言う物質に変 わり、肝臓を経て胆汁中に捨てられます。(ビリルビンはうんちの色だよ(^_^;))

赤血球の形は表面積を多く取る為に真ん中が凹んだ円盤状で酸素と二酸化炭素の遣り取りの効率の良い形となっており、毛細血管の中を通り抜け易い形となっています。

赤血球の直径の大きさは7.5㎛(マイクロメートル)
毛細血管の内径太さは5㎛
(1㎛(マイクロメートル)は1mmの1000分の1)

 

 

赤血球の本来の働きは酸素を運ぶ事で、その 酸素を捕まえているのはヘモグロビンと言う蛋白質なのです。

これは、赤血球と言う袋の中に ヘモグロビンを詰めている状態で酸素含有能力を水と比べると70倍と驚異的な数字になります。

白血球は赤血球の500分の1以下の数となり少なくなっていますが、この白血球には好中球、好酸球、好塩基球、単球、リンパ球の5種類から成り立っています。

好中球は通常に於いて骨髄の中に貯蔵されで、体内にバイ菌等が入って来た場合に血管を通ってバイ菌の近くまで行き、血管の壁から出てバイ菌を捕食します。(通常、バイ菌は血管外に侵入)

血管の壁から出た好中球は目を持ったアメーバーの様な運動をしてバイ菌に向かいますが、一度、血管から出た好中球は再び血管に戻る事は有りません。尚、バイ菌を食べた好中球は膿となってその機能を終わります。

単球は肺や肝臓などの組織に行って住み付き、マクロファージと言われる細胞となってバイ菌の捕食をしますが、好中球よりはるかにすぐれた捕食能力を発揮します。

リンパ球はこのままでは機能せずに胸腺に於いて機能強化されてTリンパ球(T細胞)となり、機能強化場所の分らないで作られるBリンパ球(B細胞)が有りますが、一般的にTリンパ球は作られた時に正常で、かつBリンパ球の命令と抗体の量の調整指揮をするものとし、Bリンパ球は作られた時に未成熟が為に変異して抗体(蛋白質)を作る為だけに働きます。

血小板は骨髄内の血液幹細胞に分化の命令の内、巨核球になれと言う命令によって巨大な細胞を作る能力が有りますが、巨核球の細胞質の一部が骨髄内でちぎれた物が血小板です。

大きさは1〜3㎛程度の小さな細胞断面ですが粘着性が強く、核が無い為に増殖する事は有りませんが、生きた状態で血管内を運搬され、血管が切れた時などは、まず血小板が多数くっ付いて出血を止める作用をします。(止血作用で有り、血液の凝固性は無い)

血液の液体成分(血漿)

 ダイビングに於いて、この血漿は肺循環によって窒素を血漿内へ吸収し、体内の組織へ
運んでしまう。???・・・これは、今までの説明(-_-;)

本当の説明は・・・、 1気圧時(地上)の呼吸に於いて肺へ取り込まれた空気は肺胞へと曝露されて必要な酸素O2をヘモグロビンに取り込み、不必要な二酸化炭素CO2を生化学的な合成と分離によって排出している。この時の窒素N2は血中アンモニア(NH3、NH4+)酸塩基平衡の関係で取り込む事は少ないとされる。1気圧時(地上)での窒素N2は不活性ガスとして問題外として見ている。

しかし、加圧環境時(ダイビング)や低圧環境時(高所の登山)に於いて、この窒素N2活性ガスとして無視出来ないものとなる。

これはヘンリーの法則によるもので、地上の生活では大気圧1気圧下で生活 しているが、この大気圧1気圧での窒素は体内に浸透し、生化学的平衡を保っている。しかし、ダイ ビングや潜函トンネル工事等で1気圧以上の圧力が掛かると、再び窒素は肺の毛細細静脈内血漿で酸化されて、血中アンモニア(NH3、NH4+)として体内へと浸透し、酸塩基平衡での窒素ガス平衡が始まる。

窒素ガス平衡とは・・・血中アンモニアの酸塩基平衡を言う。血液のpH 平均7.4(7.35〜7.45)

少し判り図らいが、1気圧以上の圧力が掛かると、窒素は肺の血液血漿を介して体内の組織へと運び、外部圧力が下がると、体内に取り込んだ窒素分は独特な形(マイクロバブルス)で血漿を介して体外へ放出する。

しかし、窒素を吸収する時と、排出する時では、組織から分離排出する時に抵抗が掛かり、吸収する時よりも多くの時間を要する事となる。

ここからはダイビングや潜函トンネル工事の約束的きまりとなるが、低圧下(1気圧)に戻る、又は水面に向けて浮上する場合は、ゆっくりと決められた時間を掛けて1気圧下に戻るしか無いのである。

この地上(1気圧下)に戻る為の約束事を破ってしまうと、体内で窒素ガス(血中アンモニアや尿素の関わった)が膨張し、毛細血管内、組織細胞膜を閉塞してしまう。つまり、減圧症と言われる症状である。

窒素分に介在する血漿はダイビングや潜函トンネル工事には無視の出来ないものであり、注意して勉強して欲しい。尚、血漿蛋白はT型の筋肉型と言われる部分に関わる為、気になる方は良く読んで下さい。

血漿とは血液の液体成分であり、細胞外液に大量の蛋白質を加えたものであり、その性質によって大きく2つのグループに分けられる。アルブミンとグロブリンの2種類のグループ。

アルブミンは血漿の半分以上を占めており、血清アルブミンとも言い、蛋白質を主成分とする。

グロブミンは沢山の種類の蛋白質が含まれており、代表的な物に免疫反応の主役である抗体
(免疫グロブリンやγグロブリン)がある。アルブミンは肝臓で生成されている。

血漿中にはかなりの量の脂肪も分解して含まれているが、固形とはならない様に蛋白質脂肪(脂質)と結び付く事で血漿中に分散し溶けているのです。

この作用は洗剤が油を分解して水に溶かしているのと同じですし、この他には牛乳に含まれる乳脂肪分も同じと言える。

この脂質蛋白質の結合体をリポ蛋白質と呼んでいて、脂質の運搬をしている。

リポ蛋白質脂質蛋白質が結び付き水溶性となって血漿内に安定した形で配分されてはおらず、その性質によって2種類のタイプに分けられます。

脂質は水よりも軽く、蛋白質は水よりも重たいので、リポ蛋白質はそれを構成している脂質蛋白質の割合により、その重さ(比重)が軽いものから重いものまで、さまざまのものがあるのです。脂質の割合が大きい程、比重は軽くなります。

この事からリポ蛋白質を比重で分類し、比重の軽いリポ蛋白質LDL、比重の重いリポ蛋白質HDLとして分類するが、厳密に言うと比重が違う事で蛋白質の種類も違うものとされる。

リポ蛋白質で比重の軽い物をLDL、比重の重い物をHDLと言う。

血漿(けっしょう)血液に含まれる液体成分であり、血液の55%をしめる。 やや黄色みを帯びた中性の液体で以下の成分で構成され、水(91%)の次にたんぱく質(7%)が多い。

    
    ・蛋白質(アルブミン、フィブリノゲン、免疫グロブリン)
    ・
脂質 (中性脂肪(トリグリセリド)、コレステロール、リン脂質、その他の脂質)
  ・
糖類(グルコース)
  ・
無機塩類(ミネラル)

ミネラル(Mineral)とは鉱物(無機質)のことであるが、一般的には人体に欠かせない微量元素のことを指す。糖質、脂質、蛋白質、ビタミンと並び五大栄養素の一つとして数えられる。

代表的なミネラル
カルシウム、リン、硫黄 カリウム、ナトリウム、塩素 マグネシウム、鉄 フッ素、珪素 亜鉛、マンガン、銅 セレン、ヨウ素、モリブデン、クロムコバルト

脂質は大きく分けて3種類あり、中性脂肪(トリグリセリド)コレステロールリン脂質がある。

この中で脂肪組織とは脂肪細胞が大量に集まった物であり、中性脂肪はこの脂肪細胞内に大量に貯えている状態を言う。

リン脂質は細胞膜の主成分。

コレステロールは「動脈硬化」が起きるとして問題とされるが、実際には高効率の良いエネルギー源であり、また細胞膜の成分ともなり、副腎皮質ホルモン(コルチゾール、アルドステロン)の原料になったりと、生体には無くてはならない重要な働きをしています。

コレステロールは食物からも得れますが、人間では体内のコレステロールの約8割を自らに合成して作っています。


体内に於けるコレステロールの合成能力は肝臓がもっとも多い。

コレステロールの体内移動
コレステロール
蛋白質と結合して血液中を移動するが、LDLコレステロールHDLコレステロールと言う形になって移動します。(LDLとHDLはリポ蛋白質であり、比重の違いで分ける)

LDLコレステロールHDLコレステロールの働きは違い、LDLコレステロールは末梢の細胞組織にコレステロールを渡し、HDLコレステロールは末梢の細胞組織からコレステロールを受け取っている。

LDLコレステロールが働き、多量のコレステロールがあると血管内に沈着して動脈硬化を引き起こす。

LDLコレステロール(高比重リポ蛋白)は悪玉コレステロール 70.0〜139.0 mg/dl

[高値を示す病態・疾患]
家族性高コレステロール血症、家族性混合型高脂血症、糖尿病、甲状腺機能低下症、ネフローゼ症候群、肥満など.

[低値を示す病態・疾患]
家族性低コレステロール血症、先天性無βリポ蛋白血症、甲状腺機能亢進症、肝硬変など
.
HDLコレステロール(低比重リポ蛋白)は善玉コレステロール M:40.0〜79.0 mg/dl
F:40.0〜90.0 mg/dl

[高値を示す病態・疾患]
家族性高HDLコレステロール血症、コレステロールエステル転送活性(CETA)欠損症、アルコール摂取

[低値を示す病態・疾患]
α-リポ蛋白欠損症、アポA欠損症、L-CAT欠損症、動脈硬化症、虚血性心疾患、 冠動脈疾患、急性肝炎、肝硬変、糖尿病、ネフローゼ症候群

高比重リポ蛋白(HDL)は、蛋白質50%、脂質50%から構成され、脂質は更にリン脂質23%、cho20%、TG5%などから成っている。

HDLは末梢から肝臓へchoを逆転送して異化及び分解させる重要な役割を果たしており、細胞内に蓄積したchoの除去機構にも関与している。

 HDLの値では動脈硬化、虚血性心疾患の危険因子としても見出され注目されている。

CHO(cho)細胞 (チャイニーズハムスター卵巣由来) の増殖および組換えタンパク質発現用中性脂肪のほとんどはトリグリセリド (Triglyceride、Triacylglycerol) 総じてTG

--------------ダイバーにとって重要です(減圧症関連)----------------

浸透圧を考える! 

T型筋肉内減圧症と関節内減圧症、無菌性骨壊死発症に関係します。

蛋白質(アルブミン)溶液
と水とで考えた場合、蛋白質の粒子の大きさは水やナトリウムと比べて非常に大きく、分子量で示すと水18、ナトリウム23に対して、蛋白質のアルブミン粒子69000と極めて大きい分子数値となる。

例えば、アルブミン溶液と水の間に膜を置いたとしますが、この膜に小さな穴が開いていて、水やナトリウムは通るがアルブミン溶液は通らない膜とします。

この膜の間には両方の間に等濃度になろうとする力が働きますが、水やナトリウムは通ってもアルブミン溶液は通れずに、代わりに水分子がアルブミン溶液に引き寄せられて等濃度になろうとします。この力を浸透圧と言う。

小さな穴の開いた膜を半透膜と言うが、毛細血管の血管壁もこれに当る。

蛋白質の事を膠質とも言い、蛋白質によって生まれる浸透圧の事を「膠質浸透圧」と言う。

血漿中には蛋白質の中で一番多いアルブミンが「膠質浸透圧」の元になっている。(膠質こうしつ)

毛細血管壁(半透膜)を介して細胞外部(細胞外液)の水分を血管内に取り込む作用を血漿内の蛋白質アルブミンが行っています。

身体に起きるむくみは血管内のアルブミンが少ない為、若しくは腎臓から尿の中へアルブミン(蛋白質)を排出する事で細胞外液を排出出来ずに体細胞にむくみが生じます。

体細胞にむくみを生じさせない為には、血漿中にアルブミンが(蛋白質)がバランス良くなければいけないとされるが、ダイビング中はイマージョンや潜水反射等で、水分を膀胱へ排出させる事も報告されており、当然、このアルブミンも大量に膀胱へと排出されると思われる。

アルブミンは他の血清タンパクに比べ分子量が小さく、量が多いため、血液の浸透圧調整の役割を担っていると、ここまでは良いのだが・・・・・。

この浸透圧調整に於いて、潜水中に体細胞組織に取り込まれた窒素分(特にアンモニアNH3と尿素NH2CONH2)は、この浸透圧調整によっては体細胞組織より排出されない可能性があるのである。

つまり、この浸透圧により毛細血管壁を通って排出されるべき窒素分(特にアンモニアNH3と尿素NH2CONH2)が出れずに体細胞組織に残り膨潤化すると筋肉型や関節型の減圧症となってしまうのだ。

特に関節型では骨頭周辺の骨組織に痛みやかゆみ、鈍痛が有るが、これ以外に、骨頭軟骨や緻密質、海綿質、骨髄腔を含めた骨組織で無菌性骨壊死が起きて来る。

この無菌性骨壊死とて、元は骨減圧症と言われるT型減圧症なのである。

関節型であっても症状がひどい場合、又はひどくなくても繰り返し潜水を行って、周辺部位にその症状が拡大した場合は、関節型から無菌性骨壊死へと進化及び転化して行く事を知って置かなければならない。これは、職業として潜っているプロダイバーに特に多い。

つまり、アルブミン量が減る事で体細胞組織からの水分中(体液)に含まれた窒素分(特にアンモニアNH3と尿素NH2CONH2)は毛細血管壁を通れない事となる。

この作用は関節や骨組織内でも起きており、T型減圧症発症の 筋肉型と関節型に及ぶもの、並びに無菌性骨壊死の原因と思われる。

ここで述べているのは筋肉内でのT型減圧症発症だが、実際は関節や関節骨頭部の炎症や腫れによる圧迫痛から神経へと伝達された痒みや疼痛・鈍痛、激痛があげられており、原因は部位組織内での血流阻止や栄養阻害による炎症や壊死から来るものだ。

物質の保持・運搬
 
脂肪酸やビリルビン、無機イオンあるいは薬剤などの外来物質を吸着する。

低分子物質は、各種臓器に取り込まれて代謝・排泄されるが、アルブミンに結合した物質は臓器に取り込まれず、血中を循環することができる。薬剤の臓器移行性に大きな影響を及ぼす。

ワルファリンやトルブタミドなどは特にアルブミンとの結合性が高く、これらと結合が競合するような薬剤を併用した場合、予想以上に組織中薬物濃度が上昇することが知られている。

  ・pH緩衝作用
  ・
各組織へのアミノ酸供給
  ・
抗酸化作用

物質の保持・運搬、pH緩衝作用、各組織へのアミノ酸供給、抗酸化作用では・・・。

1.潜水中の 血漿内窒素とアルブミンの結合の危険性の有無.
2.潜水前に服用し、血漿内のアルブミンと結合する薬物の危険性.
3.
潜水後、T型減圧症発症時の大量のアルブミン投与後の医療用高圧室チャンバー加圧が気になる。(テーブル6、テーブル6Aの治験が欲しい所だ)

4.リンパ液=間質液の体還流作用がある事で、減圧症の発症部位の違いが明確化!

血液環流を再度考えると・・・

内臓系・下半身の血流は→静脈→下大静脈

頭(脳)・上半身の血流は→静脈→上大静脈←内頚静脈と鎖骨下静脈←リンパ液
リンパ液=間質液であり、細胞外液として介在するが、血漿蛋白質が殆ど無い。

上大静脈系の血液・体液移動を原因とする減圧症(T型筋肉・関節・骨等細胞膜塞栓)

下大静脈系の血液・体液移動を原因とする減圧症(U型脳型・中枢神経系動脈塞栓)

ただし、T型筋肉・関節・骨等細胞膜塞栓では細胞内液の脱水状態として見ています。

として見る事も出来て来た。

更に血液還流を深く考えると・・・

細胞外液の血管内走流には血漿蛋白質が存在するが、同じ細胞外液の間質液=リンパ液には血漿蛋白質は殆ど存在しない。

通常(陸上生活)では、水分として細胞外液の80%を上下大静脈血管を通して回収し、リンパ管より20%の水分を上大静脈より回収し、右心房で合流する。

この時の上下大静脈では、上大静脈へ30%+リンパ液20%、下大静脈50%の比率で水分が回収され計100%の水分(血漿蛋白質の適正値含有)として還流する。

ここで注意をしなければいけないのは、肝臓によって血漿蛋白質の量的な追加量が不足すると上下大静脈内の回収水分量が不足する事となり、補う為にリンパ管からの水分回収量増大へと向う事となる。

つまり、血漿蛋白質アルブミンとグロブリン等が腎臓から膀胱へと排出された分だけ肝臓が補うまでは水分調整は正常へとは戻らない事なのだ。

体液量の調整は単純では無い為、体液の働きとリンパとリンパ管に更に詳しく書いて有ります。

この肝臓では静脈内へ血漿蛋白質を補ったり、血中のアンモニアを分解し無毒の尿素へと合成をもしている為、肝臓が弱ったままでのダイビングや激しいスポーツは厳禁と言わざるを得ない。

「減圧症自己治癒潜水法」では、治癒水深 の設定は既に完了していますが、特にT型の場合、高水深に潜れば良いかと言うとそうでは無い様です。

イマージョンや潜水反射によって多くのアルブミンが膀胱へと排出される為、この条件的な反射を回避した後に高水深へと潜るのが望ましいと思っておりましたが、この「減圧症自己治癒潜水法」では、この様な潜水反射での膀胱への排尿が起きるまでに必要加圧が完了するのです。

とは言え、それだけの潜水技能と知識を身に着けなければいけません。

毛細血管内血漿中でのアルブミン低減はごく僅かに止められる為、更に、T型減圧症に掛かっているとされる部位では組織の膨潤等が起きていて、ちくちくする痛みや内圧痛があった筈ですが、アルブミンの持っている作用によって、浸透圧調整がスムーズに行き、傷んでいる組織の水分調整、pH緩衝作用、栄養素であるアミノ酸供給、そして抗酸化作用の恩恵を受けて治癒して行くのです。

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血漿浸透圧計算式

血漿浸透圧をΠ、血清ナトリウム濃度をNa、血清カリウム濃度をK、血糖をBS、血中尿素窒素をBUN (UN)とすると、血漿浸透圧は

で近似できる。さらに臨床的には

と近似してもよい。

正常値  285〜295 mOsm/L (mOsm/kg)  mOsmはミリオスモルと読む.

 

 

 

 

 

 

 

 

 

良い話と悪い話(^^ゞ

ダイビングに於いてのLDLコレステロールは通称悪玉コレステロールと言われるが、ダイビングでの運動量は大変に多く、2ダイブで凡そ3800㎉〜4500㎉もカロリー消費されてしまう。

これは、コレステロールの分解に役立ち、特に悪玉のコレステロールを分解するが、この分解されたコレステロールの次の役割は新しく作られる細胞の細胞膜として働く。

しかし、低LDLコレステロールの場合は肝硬変などを起こす為、注意も必要とされる。

改めて再記載をして置く。

LDLコレステロールが働き、多量のコレステロールがあると血管内に沈着して動脈硬化を引き起こす。

LDLコレステロール(高比重リポ蛋白)は悪玉コレステロール 70.0〜139.0 mg/dl

[高値を示す病態・疾患]
家族性高コレステロール血症、家族性混合型高脂血症、糖尿病、甲状腺機能低下症、
ネフローゼ症候群、肥満など.

[低値を示す病態・疾患]
家族性低コレステロール血症、先天性無βリポ蛋白血症、甲状腺機能亢進症、肝硬変など
.

潜水での脱水(重要)

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T.体液の働きとリンパとリンパ管 ダイビングでの重要項目(暫く編集しています)

水分調整と、重要なる第2の血管=リンパ輸管

細胞外液の血管内走流には血漿蛋白質が存在するが、同じ細胞外液の間質液=リンパ液には血漿蛋白質は殆ど存在しない。

通常(陸上生活)では、水分として細胞外液の80%を上下大静脈血管を通して回収し、リンパ管より20%の水分を上大静脈より回収し、右心房で合流する。

この時の上下大静脈では、上大静脈へ30%+リンパ液20%、下大静脈50%の比率で水分が回収され、計100%の水分(血漿蛋白質の適正値含有)として還流する。

血漿蛋白質は肝臓から補充される為、肝臓が弱っていると脱水やむくみを安易に引き起こすが、また肝臓はアンモニアを尿素へと合成する機能もあって、機能低下による血中の尿酸値も上昇してしまう。

血漿蛋白質が血液内から減る事で一過的に上下大静脈内への回収水分量が減り、リンパ管からの水分回収の為の負荷が掛かってしまう。

水分量(体液)の不安定や不足は体への異変や不調の一歩へと進みます!

体液の仕組みと働きを相対的に考えて見ました!

T型減圧症(筋肉系、関節系、骨細胞系)を語る時、また、U型の減圧症にも少なからず関与し、もう一つの窒素分排出口としてのリンパ管とリンパ液の役割、体の水分調整、異物排除等の機能を持ったリンパ液(間質液)とリンパ節、リンパ胸管(リンパ総管)等の説明です。

キラーT細胞、ヘルパーT細胞やマクロファージも含まれ、体液中に溶けている酸素と活性酸素もマクロファージの攻撃対象なのです。

1.体液とは

1.生命の維持恒常の為に最も重要とされる液体成分。

2.水(血漿)の中に金属イオンなどの電解質成分や非電解質成分が溶けている等張液。

3.その浸透圧は血漿と等張性を持っており、生理食塩水0.9%に等しい。

4.体液は細胞内に含まれるものと細胞外に含まれるものに大別出来る。

5.細胞や組織は体液によって酸素や栄養、アミノ酸、ブドウ糖、脂肪(カイロミクロン)、ホルモン、電解質を受け取り、代謝によって生じた二酸化炭素CO2や老廃物、合成物、代謝産物、電解質、マイクロバブルス(生体生成ガス)を体液中に排出する。

注意:

二酸化炭素CO2は体内ではCO2では無い! ダイビングでの重要項目

重炭酸塩(NaHCO3)や重炭酸 イオンHCO3-、炭酸水H2CO3で存在する。

血中CO285%に相当する大部分は重炭酸塩(NaHCO3)として存在するが、組織で生じるCO2血液中に拡散CO2+H2O⇔H2CO3H++HCO3-となる。

この反応は血中に於 いては赤血球内にある炭酸脱水酵素によって速やかに行われる。

これは静脈血でのCO2は赤血球内に入り、H+HCO3- を生じるが、H+はヘモグロビンに緩衝され、HCO3-は血漿中へ押し出される。

この時にHCO3-と入れ替わりにCl-が赤血球内に入る。

これを塩素イオン移動という。

静脈内でのCO2運搬は、分解されて搬送している事に注意 !

ただし、筋疲労によって嫌気性代謝での乳酸から解離された乳酸塩と水素イオンH+の内、水素イオンH+重炭酸塩(NaHCO3)や重炭酸イオンHCO3⁻、炭酸水H2CO3とが再び結びついて静脈内へCO2を大量に合成するのです。

また、この時に大量の水(H2O)によって血液のpHも低下します。

つまり、この乳酸の過剰的産生は身体の生理機序を狂わせるのですが、疲労という精神的・肉体的身体拘束でしか抑制出来ないのです。

---------------------潜水での脱水と一部重複しています---------------------

体内での水分(体液)の割り合いは・・・?

年齢や性別によって多少は異なりますが、人間の体重の60%は水分と言われます。
その内、個別に重量換算し、水分比を抽出すると下記の数値となります。

脳  82%  骨格筋  76%  肝臓  68%  骨  20%  脂肪組織  10%

人間の体重の60%が体液(水分)で占められていて、その内、体液(水分)の2/3は細胞内にあって「細胞内液」と言われ、残り1/3は細胞外にあって、細胞を囲んでおり、「細胞外液」と言われます。

女性の場合は体重の55%が体液(水分)で、差の5%は体脂肪。いずれも個人差あり。

lymph-1図(下の図)

上の図は血漿成分の内、細胞外液と細胞内液に分けたものですが、細胞外液に含まれる間質液は血漿蛋白質を含まない成分となっています。

また、細胞内液では蛋白質を蓄えていて膠質浸透圧の保持をして水分供給が出来る様にもなっていますが、ダイビング加圧中には、この蛋白質及びリン成分に窒素分{血中アンモニア(強い刺激臭と毒性のある水溶性、脂溶性のアンモニアNH3、無臭・無毒で難脂溶性のアンモニウムイオンNH4+)}が多く吸収・吸着されます。

この比率を体重60sの成人で見てみると・・・

身体全体の60%の水分量は36ℓ 細胞内液が24ℓ 細胞外液が12ℓ

◎細胞内液や細胞外液の水分量が過剰、又は欠乏したりしない様に調節機能での血漿浸透圧や血行に於ける循環血漿量調整などが働いて水分の安定を保持しています。

◎細胞内液や細胞外液の体液成分の内、細胞外液が減少した状態を脱水と言います。

◎細胞外液(組織間質液)を大きく分けると、組織液、血漿、リンパ液、脊髄液、間節滑液、分泌液がある。
 
細胞内液細胞外液とは何だろう?
体液を構成している細胞内液と細胞外液の大きな違いは、その中に含まれている電解質の陽イオンと陰イオンの割り合いと構成にあるのです。

細胞内液K+(カリウム)が主な陽イオンで、P(リン)やアミノ酸などが陰イオン。

細胞外液Na+(ナトリウム)が陽イオンで、Cl⁻(塩基)が陰イオン。

良く見て頂くと、カリウムは細胞内液のみにあり細胞外液にはナトリウムと塩基イオンで構成。

細胞外液の内の1/4、全体重の5%相当が血管内を流れる血漿量に相当しており、残りの3/4、全体重の15%が細胞間液(間質液)として存在。

ナトリウムは成分濃度が最も高く、細胞外液の浸透圧を維持するのに重要な役割を果たしています。

また、体内での食塩(ナトリウムや塩基)の量は、細胞外液量を一定に保つ為に必要な物質で、正常な細胞外液量を維持する為、尿細管などでナトリウムの再吸収や分泌が行われる。

細胞外液の内の1/4=3ℓ 全体重の5%相当が血管内を流れる血漿量に相当.
血液中の血漿量は3ℓ

細胞外液の内の3/4=9ℓ 全体重の15%が細胞間液(間質液)として存在.

細胞外液の濃度は、大体0.9%なので、「0.9%食塩水」を「生理食塩水」と言います。

0.9%とは精製水・蒸留水などの水1000ccに食塩(塩化ナトリウム)を9g入れたもの.

細胞内液と細胞外液の特徴として

1.細胞内外の浸透圧では、細胞内と細胞外の組成が違っても浸透圧は等しい。

2.細胞内外の電解質において、細胞内の( K)と細胞外の(Na)でのNaイオンはNa―Kポンプで常時細胞外に能動輸送される為、細胞内と細胞外のイオン組成は異なる。

細胞膜と物質の輸送

輸送タンパクとしてイオンチャンネルとイオンポンプ(Na―Kポンプ)が存在.

1.受動輸送 濃度勾配に従う.

2.能動輸送 濃度勾配に逆らう為、Na+K+は濃度の濃い側へ汲み出されるのでエネルギーが必要となる。(Na+K+ATPase)

体液の電解質組成と働き(電気的イオン濃度勾配が利用される)

細胞内液

カリウムK+は細胞膜電位を()にする作用を持っている。 pH7.0

細胞外液 ナトリウムNa+やカルシュウムCa+ (+)は神経や筋の興奮に作用する。pH7.4

年齢で見た体液量比較(全体重比)

新生児 80% 3ヶ月乳児70% 年乳児60% 成人60% 老人50%

2.水分の摂取と排出

1.水分摂取量と排出量
水分バランスとは、身体に摂取される水分と排出される量が等しい事を言う。
水分摂取量 60%は飲料水からの摂取、30%の食物、10%の代謝から生じる水の摂取。

2.水分排出量
 
60%腎臓、28%皮膚と呼吸、12%糞便・発汗で排出される。

3.水分の摂取と排泄

摂取(2500ml
水(飲料水として)1500ml、食品から700ml、代謝水(代謝で生じる水) 300ml.

排出(2500ml
尿 1500ml、皮膚・肺汗や呼吸による不感蒸散900ml便 100ml.

ダイビングでは乾燥空気を吸っている為に呼吸による不感蒸散は多く、ドライスーツ着用者
では、呼吸と汗の不感蒸散での体液排出が起きてしまう。→腎外性脱水 !

血液から組織液への移動

末梢血管まで運ばれた酸素、栄養物は血漿成分の一部とともに、血管壁を通り抜けて組織
間に入り組織液となる。(注意:タンパクは出ない)

細胞はこの組織液中に浸った状態で物質交換を行っている。したがって人の細胞は血液や組織液を介して呼吸し、栄養を摂っている。

毛細血管から出るもの
酸素、アミノ酸、ブドウ糖(GLu)、脂肪(カイロミクロン)、ホルモン、電解質、飲用薬物の成分等.

細胞から出るもの
二酸化炭素、合成物、代謝産物、電解質、生体生成ガス(マイクロバブルス)、老廃物その他.

                 lymph-2                        lymph-1b

この図は末梢毛細血管端末部分を表わしていて、血漿蛋白質(アルブミン)が持っている ます。

膠質浸透圧によって水分のやり取りを行っています。この水分の中には栄養素も含まれる。

ただし、膠質浸透圧による浸透膜透過が起きていますが、多分に血圧の助けを借りて水分の移動をスムーズにしています。

3.体液移動の原理

lymph-3

末梢の毛細血管では無く、筋肉内や各部の組織を表わしたもので、動脈側毛細血管から溶出した血漿や栄養分、酸素等の状態を表している。

過剰な栄養や水分は静脈側毛細血管へと運ばれ、更に二酸化炭素CO2や細胞組織生成ガス(マイクロバブルス)も静脈側へ排出 されて行く。

ここでのリンパ管は、静脈側毛細血管での水分排出が遅れる場合、にリンパ管 を通して適度な水分調節を行う。

ただし、血液中の血漿蛋白質アルブミンが腎臓から膀胱へと大量に導きだされると脱水症状を呈し、血漿蛋 白アルブミンが減少する事で膠質浸透圧が無くなり、浸透膜が閉塞して水分の透過が出来 無くなる。

この様な時に水分が組織中間に溜まりむくみを起こすが、この水分をリンパ管を 通して排出し、水分の調整を行っている。

濾 過
血圧が押し出す力となって血管内皮間隙から低分子の物質が押し出される。
例)腎糸球体の血漿濾過、毛細血管の血漿から組織液への移動.

拡散(ガス)=酸素O2、二酸化炭素CO2、ダイビングの場合の窒素N2等.

濃度の高い方と低い方が分子の移動によって同じ濃度になる。例)肺胞のガス交換

浸透圧(電解質)
細胞膜は特定の物質を通過させるが、分子の大きいものは通過させない働きを持つ。
濃度の高い方が低い方の成分を引き込む力を浸透圧という。
例)腎尿細管の電解質や水分の吸収。組織液から細胞内への水分の移動.

血液の浸透圧とは

1.等張液 血漿の浸透圧と同じ濃度の水溶液を等張液という。
  血液の浸透圧 280mOsm/KgH2O(ミリオスモル) 0.9%生理食塩水、5%ブドウ糖液

2.高張液 血液浸透圧より高い液をいう。赤血球は収縮する。

3.低張液 血液浸透圧より低い液をいう。赤血球は膨化し破裂する。

膠質浸透圧(水分)=血漿蛋白質アルブミン、血清グロブリン等.
血漿成分は分子量が大きく、組織中に出られないので膠質浸透圧を生じ、組織内の水分を
血液中に引き込む。

膠質浸透圧は血漿中のアルブミン量によって決まる。アルブミン量が少ないと組織液から水分を引き込めなくなり浮腫(むくみ)を招く。例)組織液の血液への回収

膠質浸透圧による水分の回収(水分の80%を回収)静脈側毛細血管へ

膠質浸透圧

動脈性毛細血管圧は膠質浸透圧より高いので組織間に水分を押し出す(濾過)。

一方、静脈性毛細血管圧は膠質浸透圧より低いので水分を引き込む(80%)。

これは毛細血管中の血漿アルブミンの持つ水分吸収作用で、この浸透圧を膠質浸透圧という。膠質浸透圧が静脈静水圧より高い場合、組織内の水分を逆に引き込む(浸透)ことができる。

しかしアルブミン量が少ない時や静脈静水圧が膠質浸透圧より高いと組織液からの引き込みが出来なくなり浮腫(むくみ)を生じます。

アルブミン (血漿蛋白質)

血漿蛋白質の成分比はアルブミン55%、グロブリン38%、フィブリノーゲン7%.

アルブミンは血漿中と組織間液中に存在し、お互いに交換しながら平衡を保っている。

  血漿中アルブミン濃度:     3.5〜5.5g/dl

  組織間液中アルブミン濃度:       約1.5g/dl

    特徴: 合成量=分解量      (約6〜12g/day

1.半減期 14〜20日(肝硬変などでアルブミン合成能が低下しているときに延長する。)

2.アルブミン1gあたり約17〜20mlの水をひっぱる。

3.成分比はアルブミン55%グロブリン38%フィブリノーゲン7% 
浸透圧はアルブミン>グロブリン、フィブリノーゲン.

4.血中アルブミン値の低下→血漿膠質浸透圧低下→血漿中の水が組織間へ移る→浮腫.

5.血中アルブミン値の上昇→血漿膠質浸透圧上昇→組織間の水が血漿中へ移る→血漿量増加.

体液の移動と膠質浸透圧

動脈性血管内         毛細血管動脈圧30mmHg         膠質浸透圧28mmHg
                                                         濾過
                                                        
                                                     組織液 (-7mmHg〜5mmHg)     組織液
                                               
                                                浸透圧
                                               
静脈性血管内          毛細血管静脈圧15mmHg          膠質浸透圧28mmHg
 

リンパ管による水分の回収(水分の20%を回収)→上大静脈へ

組織中の毛細リンパ管内皮の結合はゆるく、リンパ管圧より高い組織圧によって容易に水分を回収することができる。

この部位のリンパ管圧はリンパ管本管圧より高いのでリンパ流が生じる。

リンパ管により組織間質液の約20%が回収される。リンパ管は途中に弁があり、逆流を防いでいる。

回収された組織液はリンパ液となり、最終的に静脈角から血液に入る。

注意:組織液やリンパ液は血漿よりタンパク含有量が少ない。血漿成分中のアルブミンは選択的透過によって組織中に出ない。

腎臓による再吸収機能

4.体液の障害→脱水

脱水の主原因と内容

1.暑さや運動による発汗や肺や汗からの過剰な水損失と電解質の損失.  腎外性脱水

2.極度の下痢や嘔吐による水の損失と電解質(Na+)の損失.                 腎外性脱水

3.ADH分泌低下(尿崩症) 、純水の損失.                         腎性(腎臓性)脱水

4.腎臓機能障害 水分、Na+再吸収不全、尿中への損失.    腎性(腎臓性)脱水

脱水を引き起こす原因とは!?

多尿による排尿によって水分やナトリウムが喪失する腎性(腎臓性)脱水と、運動を伴う大量の発汗、水分補給不能等によって起きてしまう腎外性脱水とに二分されます。

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脱水の分類

脱水には、細胞外液の水分とナトリウムの喪失の割合から、等張性脱水高張性脱水及び低張性脱水3タイプに分けられます。

@等張性脱水は、水分とナトリウム欠乏とがほぼ同じ割合で起こっているもの。

A高張性脱水は、水分の欠乏の割合が、ナトリウム喪失の割合よりも高い状態。

一次性高張性脱水(浸透圧上昇)で水分不足が中心、意識不明や高熱で飲水できない状態に陥った時やADH 分泌低下(尿崩症)が起きた時。水分のみ補給及び生食は絶対に駄目!

B
低張性脱水は、ナトリウム喪失の割合が、水分欠乏の割合を上回っており、純粋な食塩欠乏とも呼ばれる。

二次性低張性脱水(浸透圧低下)でNa+中心に失うと、それに伴い下痢、嘔吐、発汗で塩分を失う。

K血症や代謝性アシドーシス(胃酸損失)となる。生食の輸液水だけは絶対に駄目!

脱水のタイプによっても現われる症状が異なります。

高張性脱水は、細胞外液量の減少が細胞内から水分の移動によって軽減するのでショック状態を起こしにくい

低張性脱水では、高張性脱水とは逆に水分が細胞外から細胞内へ移動し、脱水を助長する為に、ショック状態に容易に陥るとされます。

腎性脱水過剰な利尿剤の投与に伴う合併症として、日常的にも認められる事があります。

利尿剤により体内の水分と共にナトリウム、カリウム等の電解質も共に体外に排泄され低張性脱水の型をとる事があります。

また、糖尿病の罹患者で血糖値が不安定な時に、多量の尿糖排泄に伴う浸透圧利尿の結果、脱水を認める事があります。

その他腎性脱水には、尿崩症、間質性腎炎、慢性腎不全等の疾患でも認める事があります。(腎臓での水分喪失)

腎外性脱水高温作業時における大量の発汗や、広範囲な火傷の際にも脱水を認めます。

また、意識障害に伴う水分補給摂取量の低下、消化器疾患時の激しい嘔吐などでは胃液や胃酸などの酸喪失を伴い、高度の下痢などでは水分喪失を伴って腎外性の脱水状態になる事があります。 (腎臓以外での水分の喪失)

脱水の症状
軽い脱水での自覚症状として倦怠感、疲労感、口・喉の渇き、めまい、頻拍尿量減少などが起こります。

その他の症状としては、皮膚、特に顔や前胸部、大腿部の弾力性、緊張感の低下が起こり、舌、口腔粘膜の乾燥なども更に認められます。

高齢者では、皮膚の弾力性の低下は皮下脂肪組織の減少と紛らわしい部分があるので注意を要します。

重症になって来るとチアノーゼ、意識障害、四肢冷感、乏尿、ショック状態に陥る事もあります。

脱水の影響

唾液分泌の減少     口渇感を起こす(視床下部にある浸透圧受容器の反応)

血漿浸透圧の上昇    血液濃度の上昇、血圧低下

血液量の減少       循環血液量の減少、腎血流量低下、無尿、頻脈、循環性ショック

5.浮 腫(むくみ)

浮腫(むくみ)の原因

1.毛細血管静水圧の上昇(心拍出量の低下)、静脈血の貯留(うっ血)

2.血漿膠質浸透圧の低下(アルブミンの減少→肝硬変・ネフローゼ等)

3.毛細血管の透過性亢進(血漿水分の組織中への移動・炎症)

浮腫を起こす疾患では・・・

心臓疾患での浮腫

左心房・左心室不全での心拍出血液量の低下(後負荷)によって腎血流量が減少する為で、レニン・ アンギオテンシン・アルドステロン系が反応作用して水分の再吸収が起こり、血圧を上昇させる (血圧を上げて拍出量を維持しようとする)。

結果的に乏尿となるが、更に体内に水分が溜る状態となる。

また、右心房・右心室不全があると、膠質浸透圧により静脈静水圧の方が高くなり、組織中の水分の回収が出来なくなってしまう。

腎臓性浮腫(腎性浮腫)

腎臓の血流量低下によって組織中にナトリウムNaが貯留し、細胞外液の水分は維持されたままになる。

また、腎ネフローゼなどの尿への血漿蛋白質アルブミン損失は血液の膠質浸透圧を低下させ、細胞外液内の間質液(リンパ液)の回収が出来なくなる。

肝硬変での浮腫

肝硬変になると血漿アルブミンの合成障害が起こり、門脈圧が上昇する事で血流の循環障害を起こす。

静脈静水圧の上昇は血液中のアルブミンを腎臓から膀胱へと漏出させる事で、血漿蛋白質アルブミンの減少によって膠質浸透圧が低下し、間質液の回収が出来なくなり腹水や浮腫(むくみ)を生じさせる。

リンパ性浮腫

手術でのリンパ管閉塞やリンパ節切除、象皮病でのフィラリヤや手術によるリンパ管閉塞.

----------------------フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』より↓------------

象皮病(ぞうひびょう)あるいは象皮症(ぞうひしょう)とは主としてバンクロフト糸状虫などのヒトを宿主とするリンパ管・リンパ節寄生性のフィラリア類が寄生することによる後遺症の一つ。

身体の末梢部の皮膚や皮下組織の結合組織が著しく増殖して硬化し、ゾウの皮膚状の様相を呈するため、この名で呼ばれる。陰嚢、上腕、陰茎、外陰部、乳房などで発症しやすい。

フィラリアは線形動物門(線虫類)に属する寄生虫で、今日の日本ではヒト寄生性のフィラリアがほぼ根絶されているため、イヌ寄生性のフィラリアの方が有名になっている。

しかし、ヒト寄生性のフィラリアは江戸時代には全国的に分布し、重要な感染症であった。稀にイヌ寄生性のフィラリアも人体に感染することがあるが、これは心臓寄生性であり、象皮病は起こさない。

フィラリア類の雌はミクロフィラリアと呼ばれる幼生を多量に産生し、これが末梢の毛細血管中に移行して媒介者である蚊に吸引され、他の宿主に運搬される。

バンクロフト糸状虫などはリンパ管やリンパ節に成虫が寄生するため、雌の産んだミクロフィラリアは、まず最初にリンパ管内に出現する。

患者は急性症状として成虫やミクロフィラリアに起因するリンパ管やリンパ節の炎症を起こし、これが繰り返されることでリンパ管の閉塞や破裂が起こる。

リンパ管の主要な機能は身体末梢部に毛細血管から供給される組織液の回収であるので、リンパ管の破壊が進行すると身体末梢部に組織液が滞留し、むくみ(浮腫)を生じる。

この浮腫の刺激によって皮膚や皮下組織の結合組織が増殖して象皮病をきたすのである。

このように、象皮病の直接的な原因はフィラリアの寄生ではなく、リンパ管の破壊と、それによる組織液の滞留である。

そのため、体内のフィラリアが既に死滅して感染自体は終結していても、この症状は進行する。むしろ重症の象皮病の患者の体内からは既にフィラリアは見られないことが多い。

また、フィラリアの感染によらず、乳がんなどの手術によってリンパ管を破壊しても、象皮病を起こすことがある。

----------------------フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』より↑-------------

浮腫(むくみ)の部位としては

心臓性浮腫 体の下側全体(静脈静水圧の上昇).

局所的浮腫 Na貯留は伴わない。血管透過性亢進。局部の炎症、リンパ管の閉塞等.

全身性浮腫 細胞外液の増加を伴う。腎でのNa吸収亢進。うっ血性心不全(中心静脈還流障害)、肝硬変(アルブミン合成障害)、ネフローゼ(血漿蛋白質の損失).

----------------------フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』より↓------------

ネフローゼ症候群(Nephrotic syndrome) は、ある特定の症状を呈する腎臓疾患の総称。

高脂血症(高コレステロール血症)、低蛋白血症、高度な蛋白尿、浮腫(眼瞼や下肢)を主な症状とし、糸球体基底膜の透過の亢進を一次的異常として認める症候群である。

若年層(特に幼少期では男子)に多く発症するが、30代の男女も発症例も多数報告されている。

原発性糸球体疾患に起因する一次性ネフローゼ症候群と続発性糸球体疾患による二次性ネフローゼ症候群に分類される。

一次性ネフローゼ症候群の成人の占める割合は、70〜80%と多数を占めるが中高年では半数以上が慢性腎症であり、加齢に伴って割合は増加する。最初の発症から5年以内に2回以上の再発率は80%〜90%と高い。

二次性ネフローゼ症候群の発症は年齢によって異なるが、小児では紫斑病性腎炎が多く、糖尿病性腎症やループス腎炎は成人の発症が多い。

ネフローゼ症候群の種類

原発性
    ○微小変化群または、微小変化型
    ○巣状糸球体硬化症または巣状分節状糸球体硬化症
    ○膜性腎症
    ○膜性増殖性糸球体腎炎

・続発性
    ○膜性増殖性糸球体腎炎
    ○アミロイドーシス
    ○膠原病
    ○多発性骨髄腫
    ○ホジキン病
    ○HIV感染、HBV感染
    ○糖尿病など

ネフローゼ症候群での症状

上記の主症状以外にも、強度の全身倦怠感、皮膚の蒼白化や無気力、食欲不振、覆水・胸水等をみる。

タンパクを尿中に排泄してしまう濾過障害の原因は、主に、腎臓の糸球体にあり、この部位に何らかの原因で、炎症が発生することによって、本症を惹起すると考えられている。

主に、アルブミンなどの血中タンパクが排泄されるため、血中タンパクが減少し、血漿膠質浸透圧が低下する。

このため、全身に浮腫を形成する傾向が現れる。

また、尿中タンパクが増大するため、尿の浸透圧が増大し、尿細管における水の再吸収が抑制され、一過性に利尿傾向となる。

なお、この遺失タンパク分を肝臓が補完しようとするため、肝臓が、アルブミンの合成を開始するが、同時にLDLのようなコレステロール運搬タンパクも合成してしまうため、本症のような腎臓疾患の罹患者では、高頻度に高脂血症の状態をみることがある。

長期の利尿期間を経て、腎臓の病態が改善されず、高度に腎不全の状態を呈し始める時期には、乏尿となる。

----------------------フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』より↑--------------

6.体液量の調節

1)体液量は体内のNa+量によって決定される。
  体内のNa+はレニン、アンギオテンシン系により腎臓で調節される。

2)体液のホルモンによる調節
  ・ 脱水時は水分の排泄が抑制され、体液の浸透圧が上昇する。
  ・ 視床下部にある浸透圧受容器によって感知される。
  ・ 循環有効血液量の低下はレニン・アンギオテンシン・アルドステロン系(RAA系)を作動。
  ・ 下垂体後葉からADH(バソプレシン)が分泌される。
  ・ 糸球体から濾過された水分の再吸収を高めて浸透圧を正常に戻す。

3)レニン・アンギオテンシン・アルドステロン系の働き

4)利尿ホルモンと抗利尿ホルモンの作用

ADH(下垂体後葉:バソプレシン)          尿細管・集合管に作用して水分再吸収

アルドステロン(副腎皮質:ステロイドホルモン) 遠位尿細管に作用してNa+吸収収

ANP心房:心房性房性Na利尿ペプチド)        尿細管に作用してNa排出促進、水分排出

ADHantidiuretic hormonevasopressin
アルドステロン:aldosterone 心房性利尿ペプチド:atrial natriuretic peptideANP

5)利尿剤とは腎尿細管や集合管でのNa+、水分の吸収をブロックして水分排出させ為の薬剤。

7.血漿浸透圧と電解質(ダイビングでの重要項目)

1)電解質(イオン)とは
 イオンとは 水溶液中で電気的に荷電( )する化合物や元素のこと。

 陽イオン(+)とは 正(+)荷電する金属イオン Na、 K、 Ca2、Mg2

 陰イオン(-)とは 負荷電する金属元素のこと Cl-、 HCO3-、 PO43-

 が1つは1価の陽イオン 、 2+は2価の陽イオン 、3-は3価の陰イオン
 水(H2O)は(H+)と(OH-)になる。

2)電解質の役割は生命の維持そのもの

 
@ 体内水分変動を調節し分布を正常に保つ。
 A 体液の浸透圧を維持し細胞内外の浸透圧の変動を平衡に保つ。
 B 酸・塩基平衡バランスを保たせる。pHを一定にする働きを持つ。
 C 細胞内外の電解質濃度の勾配を利用して物質の移動を助ける

3)主要なイオンの分布と働き

Na+(ナトリウム)

細胞外に90%を占めNa+の流入はK+とともに細胞膜電位を変化させる。

細胞興奮伝導に必要でNa+濃度の調節はアルドステロンによって行われNa+の再吸収を促進させる。

Na+の移動は水分の移動を伴うので循環血 液量や血圧を変動させる。

塩分摂取量は7g以下/日に抑える。

K+(カリウム)

細胞内の主要なイオンNa+と同じく細胞の興奮性を維持するのに重要な働きをする。

K+濃度の調節はアルドステロンによって行われ、遠位尿細管に作用してK+の排出を促進する。

利尿薬はNa+と同じくK+を排出する。

細胞外K+濃度の上昇(8m Eq/L以上で心停止)は心臓律動への異常を引 き起こす。

Ca2+カルシウム

骨組織に殆どが存在し、筋の収縮、血液凝固に必要である。
血漿中のCa
2は上皮小体のパラトルモンによって調節される。

HCO3(重炭酸イオン)

重炭酸は体液の酸―塩基平衡に重要なイオンである。

HCO3-はアルカリ性 で身体の酸性物質を除去する働きを持つ。

二酸化炭素はHCO3-の形で血中に入り輸送される。HCO3-は腎臓によって調節されている。

4)血漿浸透圧の調整(Naと水の関係)

Na+の摂取は水を伴わなければ体液の浸透圧上昇を起こす

つまり食塩が身体に入って水分が伴わないと体液の浸透圧が上昇する。

浸透圧の上昇を感知する受容器は視床下部あ りそれを感知して喉の渇き(口渇感)を覚えるが、水が飲めなければ細胞内液から細胞外液への水の移動が起こる

一度摂取された過剰なNa+は数日後に排出される

この時に摂取されたNa+は一時的に体内に残存するので、それに応じた水分が体内に保持される(浮腫)

水分だけの摂取は数時間で排出される

5)Na+の摂取と体液の貯留

Naイオン1m Eq(0.023gNa)の過剰で7.2mlの体液貯留となる。
Naイオン1m Eqの損失で7.2mlの体液損失となる。

6)Naの過剰は・・・

 
身体にNa+が多いと浸透圧が上昇し、血液浸透圧が上昇する。
 Na+の過剰で組織中に水分がたまる。
 循環血液量が増加する。
 心臓への負担が高まり高血圧になりやすい。(減塩療法)

7)Naの不足

体内のNaが不足する二次性の脱水を伴い、RAA系が作動し、腎尿細管ではNaの保持の為に再吸収が促進、尿量、発汗の低下が見られる。

8.酸―塩基平衡(ダイビングでの重要項目)

アンモニアによる酸塩基平衡

NH3 + H2O ⇔ NH4+ + OH- 【酸塩基平衡反応】生体恒常性に絶対不可欠!

pH調節の必要性とは:体内の全ての化学反応は特定のpHの範囲内(pH7.35−7.45)で行われるのでこれを維持する必要がある。

 (酸性 H+が多い ------- 中性 ------- (OH-が多いアルカリ性)

  pH1              pH7             pH14
 「胃液・塩酸・硫酸・酢酸---水--重炭酸--膵液--苛性ソーダ」

1)体液のpH

 
正常なpHの範囲              pH 7.35−7.45
 正常な血液のpH       pH 7.4
 生命を維持できるpH範囲    pH 6.8−8.0

2)酸―塩基のpHを正常域に維持するしくみ

なぜ、酸が生成されるのか?
 
・大部分の酸(H+:水素イオン)は体内において化学反応でよって生じる。
 ・グルコースはO2の存在下で代謝されてCO2と水とエネルギー(ATP)を産生する。
 ・生じたCO2は水と結合して酸を生じる。(H2O + CO2 → HCO3- H+
 ・酸素O2がない状態では乳酸を産生する。
 ・脂肪の分解によってケト酸が生じ、蛋白質の分解によって硫酸が生じる。

発生した全ての酸は細胞の代謝によって産生されるので、身体はこれらの酸性物質を取り除く必要があり生じた酸性物質は体内の緩衝作用によって除かれ、体内のpHは維持される。

その仕組みには次の3つの機構が働く。

3)酸の緩衝作用

緩衝系(バッファー)(ダイビングでの重要項目)

T.血液の緩衝系作用

体内中の過剰な酸と塩基を中和する働きを持つ。
血液のH+が増加(pHが下がる)すると緩衝系は血中のH+を除去し、H+が減ると反対にH+を供給し、血液のpHを一定範囲にとどめている。

血液緩衝系には
  @炭酸緩衝系、Aリン酸緩衝系、Bヘモグロビン緩衝系、C血漿蛋白系の緩衝系がある。

炭酸緩衝作用

H++ HCO3-  ⇔  H2CO3  ⇔  CO2 + H2O

H+が増えると H+ HCO3-(アルカリとして働く)→ H2CO3(炭酸にする)

pHが上がると H2CO3(弱酸として働く)

H+(水素を供給)+ HCO3-

U.肺での緩衝作用(ダイビングでの重要項目)

代謝で生じたCO2は赤血球の炭酸脱水素酵素によりHCO3-に変換され再びCO2に戻り呼出される。

血漿中の炭酸ガス濃度は呼吸によって変動するためにガス交換機能の促進・低下によって調節される。

つまり呼吸促進によって炭酸は炭酸ガスとなって排出され血漿はアルカリに傾く。

しかし呼吸機能の低下によって炭酸ガスは体内に溜まり酸性に傾く。

これが肺の呼吸による調節系です。

        H+ HCO3- → CO2 呼吸から排出) + H2O

a.呼吸数の減少(呼吸性アシドーシス)

呼吸数が減ると体内にCO2が増えて、水と結合して炭酸となり、さらに重炭酸と水素イオンが生じてpHが低下する。これを呼吸性アシドーシスという。pHの低下は呼吸中枢を刺激する。

b.呼吸数の増加(呼吸性アルカローシス)過呼吸

呼吸数が増えるとCO2が体内から排出される。その結果、血中のCO2が減少して、pHが上昇する。これを呼吸性アルカローシスという。

V.腎臓による緩衝作用

体内にある余分な酸や塩素などのイオンは尿中に排出され、Naイオンは一部を排出して大部分は再吸収される。

       H+(腎から排出) HCO3-    H2CO3   CO2 H2O(腎から排出)

4)アシドーシスとアルカローシス

アシドーシス      pH7.35−7.45  より小さくなった場合をいう。血液は酸性になる.

アルカローシス pH7.35−7.45  より大きくなった場合をいう。血液はアルカリ性になる.

a.アシドーシスを起こす病気としては・・・

呼吸性アシドーシス

肺の機能障害でCO2の排出ができない状態。以下の呼吸器機能
障害は血漿の
CO2レベルを下げることができない。CO2H+を産生しアシドーシスを起こす。

呼吸機能の低下

持続性の慢性肺疾患(肺気腫)

換気低下(喘息)

麻酔 ・胸郭の圧迫

重症筋無力症(呼吸筋障害)

・延髄の損傷などは呼吸活動を低下させる。
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代謝性アシドーシス 非呼吸性の代謝が原因でpHが低下する。

腎性H+HPO4-HSO4-の排出障害。排出障害による高 カリウム(K)血症。
         水素イオン
H+
、リン酸水素イオンHPO4-、硫酸水素イオンHSO4-

体内でのリンはCa同様、その大部分が硬組織(骨・歯)に分布している。

軟部組織では、蛋白・脂質・糖と結合して存在するとともに、ATPNADP、クレアチニンリン酸などの形で高エネルギー結合を形成する。

血中のリンは全体の1%未満で、その30%が無機リン、他が有機リン(主にリン脂質)である。

無機リンには、4つの形(H3PO4,H2PO4, HPO4, PO4)で存在し、その割合は血液のpHで変動する。

無機リンは、主にATPに利用されて、ADPAMPになるときに生じ、その血中レベルは体の活動性に応じて変動する。

一方、無機リンの血中濃度は、ビタミンDPTHにより調節される。

すなわち、ビタミンDはその腸管からの吸収を促進し、PTHは糸球体で濾過された無機リンの尿細管からの再吸収を抑制することでその排泄を促進する。

糖尿病性

グルコース代謝をコントロールできない糖尿病は緩衝系が破綻しているのでケト酸(脂肪の燃焼によるケトン体)が多量に産生されて血漿中に蓄積しケトアシドーシスを起こす。

グルコース不足は脂肪を分解する。脂肪の分解には多量の酸素が必要である(インスリン不足の時)

またHPO4-HSO4-の増加、HCO3-が損失する。

クスマール呼吸(クスマウル呼吸)

糖尿病により脂肪分解によってケトン体が生成され、この代謝の課程で強酸のケト酸が生成される。

このH+増加は延髄の呼吸中枢を刺激して呼吸の数と深さを増加させる。この呼吸によってH+CO2を排出させようとする呼吸反応である。

スキューバダイビングでの呼吸法トラブル→大きく深く吸って、大きく深く吐く(アシドーシスの誘導)

 回避する呼吸法 大きく吸って、吐く時は肩の力を抜く。

持続的下痢     HCO3-(アルカリ性)の喪失によって酸性に傾く。

b.アルカローシスを起こす病気としては・・・

呼吸性アルカローシス  炭酸ガスCO2の過剰換気
・呼吸の過換気
・不安
・アスピリン中毒

代謝性アルカローシス
・胃液の持続的な嘔吐   塩酸(HClの喪失)
・制酸剤の過度の使用   HCO3-の増加

人体のしくみと働き http://plaza.umin.ac.jp/~histsite/を参考にし、更に加筆致しました。

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